アーザーデガーン油田

アーザーデガーン油田

アーザーデガーン油田は、1999年にイラン国営石油会社によって発見された、イラン最大の油田です。その名前はペルシャ語で「（イラクから）逃げてきた人々」を意味します。イラン西部のイラク国境付近に位置し、推定埋蔵量は260億バレルに達すると言われ、世界有数の規模を誇ります。

開発の経緯

アーザーデガーン油田の開発は、その豊富な埋蔵量にも関わらず、様々な要因によって遅れてきました。

イラン・イラク戦争の影響: 1980年に勃発したイラン・イラク戦争によって、油田一帯が激戦区となり、開発は事実上不可能となりました。また、この地域には多数の地雷が埋設されており、その除去作業も開発の大きな障壁となっています。
国際的な政治情勢: 2000年代に入ると、イランの核開発疑惑が浮上し、アメリカ合衆国をはじめとする国際社会から開発中止の圧力が強まりました。これにより、開発交渉は一時中断を余儀なくされました。

日本企業の関与と撤退

当初、アーザーデガーン油田の開発には、国際石油開発を中心とする日本企業が大きな役割を担っていました。2004年には、イラン国営企業との間で開発に向けたバイバック契約が締結され、日本側は75%の権益を獲得しました。しかし、2005年にマフムード・アフマディーネジャード大統領が就任すると、対米強硬姿勢を強めたことから、アメリカからの開発中止要請がさらに高まりました。

その結果、2006年には国際石油開発が権益を大幅に縮小し、10%の参加権益で開発に参加することになりました。これは、アメリカからの圧力に加え、イランとの関係悪化を避けたいという日本の事情も影響したと考えられます。

その後の展開

2007年にはイラン国営石油会社が生産を開始し、2009年以降は中国石油天然気集団（CNPC）も開発に参入しました。しかし、2014年にはイラン石油省がCNPCとの南部油田契約を打ち切り、北部油田のみの開発を認めるという事態も発生しました。

2017年には南部油田の国際入札が発表され、現在に至っています。

日本の立場

アーザーデガーン油田は、日本企業が権益を握る数少ない大型油田の一つであり、日本にとっては重要な資源供給源でした。しかし、核開発問題や国際的な政治情勢の変化により、その開発は困難な状況に置かれています。

日本としては、原油輸入量の15%をイランに依存している現状を踏まえ、イランとの関係悪化を避けたいという思惑があります。しかし、核兵器開発の問題が深刻化すれば、国際社会と連携した経済制裁を求められる可能性も高く、難しい舵取りを迫られています。

その他の動向

アーザーデガーン油田の開発をめぐっては、フランスのトタル社やロシアのガスプロム社なども関心を示していましたが、いずれも交渉は頓挫しています。

関連項目

* ダシュテ・アーザーデガーン

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