アージェント (曲)

フォリナーの代表曲「アージェント」：アルバム『4』の成功を導いたパワフルな一撃

イギリスとアメリカを股にかけて活躍するロックバンド、フォリナーが、1981年にリリースし大成功を収めたアルバム『4』から最初にシングルカットされた楽曲が「アージェント」(Urgent)です。この曲は、バンドのキャリアにおいて重要な節目となり、その後のアルバムの驚異的なセールスを牽引する役割を果たしました。

制作背景：異色のコラボレーションが生んだサウンド

「アージェント」のレコーディングは、当時ハードロックバンドAC/DC|AC_DCのプロデューサーとして名を馳せていたロバート・ジョン・マット・ランジを招いて行われました。フォリナーのサウンドは、AC/DC|AC_DCのようなヘヴィーさが特徴ではなかったため、このプロデューサー選定は意外な組み合わせと見なされました。しかし、ランジのプロデュースによって、楽曲は洗練されつつもパワフルなロックサウンドを獲得します。さらに、シンセサイザーのプログラミングと演奏には、当時新進気鋭のエレクトロニックミュージシャンであったトーマス・ドルビーが参加。彼の貢献は、楽曲にモダンな要素を加えました。そして何よりも印象的なのが、モータウンの伝説的なサクソフォーン奏者、ジュニア・ウォーカーによるソロパートです。彼の魂のこもったサックスプレイは、「アージェント」のサウンドに唯一無二の個性を与え、楽曲の大きな魅力となっています。

チャートでの圧倒的な成功

「アージェント」はリリースされるやいなや、世界各国のチャートで大きな成功を収めました。アメリカでは、1981年7月4日付でBillboard Hot 100にチャートインし、最高位は4位を記録。この高順位を9月いっぱい維持するというロングヒットとなりました。また、Billboardのロック・トラックチャートでは、実に4週連続で1位を獲得するという快挙を成し遂げました。

アルバム『4』からリリースされたAOR（Adult Oriented Rock）路線のシングルとしては、「アージェント」が最も大きな商業的成功を収めました。後に続くシングルで、Billboard Hot 100で最高2位となりゴールドディスクに認定された「ガール・ライク・ユー」よりも、この曲の方がセールス面で上回ったのです。「アージェント」がチャートを駆け上るのと時を同じくして、アルバム『4』もアメリカレコード協会（RIAA）によってゴールドディスク、そしてプラチナディスクに認定されました。最終的に『4』はRIAAからマルチ・プラチナディスクとして認定され、アメリカ国内だけで600万枚以上という驚異的な売上を記録することとなります。「アージェント」のヒットが、アルバム全体の売上を大きく後押ししたことは間違いありません。

アメリカ以外でも、「アージェント」は好成績を残しています。カナダでは1981年9月にチャートの首位に立ち、スウェーデンでは1982年3月に20位を記録するなど、両国においてフォリナーのシングルとしては「アイ・ウォナ・ノウ」に次ぐ歴代2番目のセールスを記録しました。オーストラリアでも1981年8月に最高24位に達しています。イギリスでは、1981年の初リリース時には54位と比較的低い順位でしたが、翌1982年に「ガール・ライク・ユー」がトップ10ヒットとなった後に再リリースされ、再びチャートインしましたが、前回の順位を下回る45位にとどまりました。

さまざまな形態でのリリースとカバー

「アージェント」は、オリジナルリリース以降も様々な形態でシングルとして発売されました。1981年には「Girl on the Moon」をB面に配したUSおよびUKの7インチシングルがリリースされました。1982年にはイギリスで、ライブバージョンの「Head Games」や「Hot Blooded」をB面に追加した7インチや12インチシングルが再リリースされています。

スタジオ録音の他に、フォリナーはライブアルバムでもこの曲を披露しています。1993年の『クラシック・ヒッツ・ライヴ』にはライブバージョンが収録されており、また、2005年の『エクステンデッド・ヴァージョンズ』では、ボーカルにケリー・ハンセンを迎えた新しいラインナップでのライブパフォーマンスを聴くことができます。

他のアーティストによるカバーも存在します。オリジナルでサクソフォーンソロを演奏したジュニア・ウォーカー自身が、自身のバンドであるジュニア・ウォーカー・アンド・ジ・オール・スターズの1983年のアルバム『ブロウ・ザ・ハウス・ダウン』でセルフカバーを収録しました。このウォーカーによるバージョンは、1985年のマドンナ主演映画『マドンナのスーザンを探して』で使用されています。また、エレクトロポップやR&Bの歌手として知られるシャノンも、1985年のアルバム『ドゥ・ユー・ワナ・ゲット・アウェイ』で「アージェント」をカバー。シャノンのバージョンは、このアルバムからの4番目のシングルとしてリリースされ、BillboardのR&Bシングルチャートに2週間チャートインし、最高68位を記録しました。

文化的な影響

「アージェント」は、リリースから長い年月を経てもなお、様々なメディアで使用されています。例えば、2011年5月23日には、人気音楽ゲーム『ロックバンド3』のダウンロードコンテンツとして配信されました。また、同じく2011年には、アメリカのスポーツ専門チャンネルESPNの看板番組『マンデーナイトフットボール』でも楽曲が使用されるなど、今なおその存在感を放っています。

「アージェント」は、フォリナーのキャリアを語る上で欠かせない楽曲です。マット・ランジ、トーマス・ドルビー、ジュニア・ウォーカーといった才能とのコラボレーションによって生み出されたそのサウンドと、世界各国のチャートで記録した輝かしい成績は、フォリナーが80年代を代表するロックバンドとしての地位を確立する上で、決定的な役割を果たしたと言えるでしょう。

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