アールト大学

アールト大学の概要

アールト大学（Aalto University）は、フィンランドの主要な総合大学であり、エスポーにメインキャンパスを構えています。大学名は、フィンランドを代表する建築家でありデザイナーでもあるアルヴァ・アールトに由来します。アールト自身も、かつてヘルシンキ工科大学の卒業生であり、現在のメインキャンパスであるオタニエミキャンパスの初期設計にも携わっています。

アールト大学は、2010年にヘルシンキ工科大学、ヘルシンキ経済大学、ヘルシンキ美術大学という3つの大学が合併して設立されました。この合併は、フィンランド国内の公立大学経営の効率化を目的としたものでしたが、結果としてアールト大学は、産官学連携によるイノベーション推進の中心的役割を担うことになりました。そのため、エンジニアリング、アート＆デザイン、ビジネスの各分野を緊密に連携させ、学際的な教育と研究を強みとしています。

大学は6つの学部で構成されており、約19,000人の学生と5,000人の教職員が在籍しています。フィンランド国内では3番目に大きな大学であり、各学部はそれぞれの分野で国際的な評価を得ています。特にアート・デザイン・建築学部は、QS世界大学ランキングのアート＆デザイン分野で、過去最高で世界6位、ヨーロッパ4位を記録しており、この分野における最先端の教育・研究機関として知られています。

メインキャンパスはエスポー市のオタニエミ地区にあり、全学部が利用しています。また、ヘルシンキ市のトーロ地区にはビジネス学部の機能の一部が、そしてミッケリ、ポリ、ヴァーサにもいくつかのユニットが存在します。

歴史と変遷

2004年、フィンランド金融省は、国内の大学が多すぎるとの結論から、大学の統合を提唱しました。この提案を受け、当時ヘルシンキ美術大学の学長であったユルヨ・ソタマーが、既存の大学を合併してアールト大学を設立する構想を打ち出しました。その結果、2007年11月、フィンランド政府が大学合併のプロジェクトを進めることを決定し、2010年1月1日にアールト大学が開学しました。

大学の名称は、建築、経済、アートの3分野で傑出した功績を残したアルヴァ・アールトに敬意を表して名付けられました。

アールト大学を構成する旧大学

アールト大学は、以下の3つの大学を基盤としています。

ヘルシンキ工科大学：1849年に工芸学校として設立され、1908年に大学となりました。1966年に現在のオタニエミキャンパスに移転しました。アールト大学設立時には、約250人の教員と約15,000人の学生を擁し、理工系学部の中核を担いました。その後、化学技術学部、電気工学部、工学部、理学部に再編されました。
ヘルシンキ経済大学：1904年に設立され、1911年に大学の地位を得ました。当初は私立大学でしたが、1974年からフィンランド政府が予算を管理するようになりました。アールト大学設立後は、アールト大学経済学部となり、現在はアールト大学ビジネス学部として運営されています。
ヘルシンキ美術大学：1871年設立の北欧最大規模の美術大学でした。視覚メディアの研究開発センターも併設されており、学士、修士、博士課程を提供していました。合併後、アールト大学美術学部となり、後に建築学部が統合され、現在のアールト大学アート・デザイン・建築学部となりました。

大学の組織構造と学部

アールト大学は、アールト大学財団によって運営されており、7人の理事で構成される理事会が大学の経営戦略、執行、予算などを決定します。学長は大学の代表であり、副学長はそれを補佐します。大学は6つの学部で構成され、それぞれが自律的な行政構造を持っています。

以下は、アールト大学の学部構成です。

アート・デザイン・建築学部 (School of Arts, Design and Architecture)
ビジネス学部 (School of Business)
化学技術学部 (School of Chemical Engineering)
電気工学部 (School of Electrical Engineering)
工学部 (School of Engineering)
* 理学部 (School of Science)

また、アールト起業家センターやAaltoesなどの研究・教育機関や、図書館、職業能力開発所、デザインファクトリーなどの付属施設も存在します。

キャンパス

アールト大学のメインキャンパスは、エスポー市のオタニエミ地区に位置しています。キャンパス内には、アルヴァ・アールトが設計した建物も含まれています。また、近隣にはハイテク企業や研究機関が集積しており、イノベーションの拠点となっています。2017年には、キャンパスに直結する地下鉄駅が開業し、都心からのアクセスも向上しました。

かつては、ヘルシンキ市内のアラビア地区とトーロ地区にもキャンパスがありましたが、2019年までにすべての学部がオタニエミに移転しました。

学生生活と学生活動

オタニエミには、学生寮「Teekkarikylä」があり、2,000人を超える学生が生活しています。また、100を超える学生団体が存在し、スポーツから音楽まで様々な課外活動が活発に行われています。

アート・デザイン・建築学部について

アート・デザイン・建築学部は、138年にわたりフィンランドのアート・デザイン教育をリードしてきました。国際的な大学院大学であり、世界50カ国以上から留学生が集まります。ファインアート、デザイン、ニューメディア、美術教育、映像など多様な分野で学位を取得できます。また、サービスデザインやソーシャルデザインといった先駆的なデザイン領域の研究・教育を牽引しています。

卒業生

アールト大学の前身である3つの大学は、それぞれがフィンランドを代表する人物を輩出してきました。特に、ヘルシンキ工科大学とヘルシンキ経済大学は、高度な技能とリーダーシップを備えた人材を育成し、フィンランドの経済成長に貢献してきました。また、ヘルシンキ美術大学は、フィンランド・デザインとして知られる独特のスタイルを創造した多くの著名なアーティストやデザイナーを輩出しています。

その他

キャンパス内には、カイヤ＆へイッキ・シレーン設計のオタニエミ礼拝堂があります。

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