アール県

アール県：トルコ東部の高地と歴史が織りなす地

アール県は、トルコ東アナトリア地方に位置し、県都アールは標高1650mの高地にあります。県の名前は、トルコ最高峰のアララト山に由来します。

地理

アール県は、南にヴァン、ビトリス、西にムシュ、エルズルム、北にカルス、ウードゥル各県と接し、東はイランとの国境になっています。アララト山頂からは、アルメニア、イラン、ジョージア、アゼルバイジャンなど多くの国々を見渡すことができます。アララト山のふもとには、ドーウベイアズィットの町があります。

県域の46%は山地で、18%が平地、7%が牧草地です。アララト山（5,137m）をはじめ、リトルアララト山（3,925m）、テンデュレク山（3,533m）など、3000m級の山々が連なります。平地は肥沃で、火山堆積物に覆われており、穀物生産や牧草の栽培に使われています。ユーフラテス川の支流であるムラト川に多くの支流が流れ込み、平野に水を供給しています。高地であるため、気温は非常に低く、-45℃を下回ることもあります。山岳地帯では、大地がむき出しになっている場所も多く見られます。

山を越える重要な道路がいくつかあり、交通の要所となっています。

歴史

アール高原は、古くはウラルトゥ王国、その後アルメニア王国オロンテド朝に支配されました。東西を結ぶ要衝であったため、アッシリア、ギリシャ、古代ローマ、東ローマ帝国、アラブ、モンゴル、ペルシャ、セルジューク、オスマン帝国など、多くの民族がこの地を支配しました。

トルコ人の最初の痕跡は、680年のサカによるドーウベイアズィット地域の占領に見られます。また、ムスリムは872年のアッバース朝の時代に現れました。

1071年のマラズギルトの戦いで東ローマ帝国が敗北し、多くのトルコ人がこの地を通り抜け始めました。その後、チャルディラーンの戦いでオスマン帝国の支配下に入りました。

オスマン帝国時代、この県はショルブラク、カラキリスと呼ばれ、帝国の末期にはカラコースと呼ばれていました。オスマン帝国下では、クルド人やアルメニア人が土着民として多数居住していましたが、アルメニア人虐殺によってその数は激減し、難を逃れた人々はロシアへと逃れていきました。

現代では、クルドゲリラによる武装闘争によって、地域は再び不安定な状況にあります。2006年には、トルコ＝イラン天然ガスパイプラインが爆発し、トルコ当局はクルディスタン労働者党の犯行ではないかと疑っています。

下位自治体

アール県には、以下の8つの下位自治体があります。

アール（Ağrı）
ディヤディン（Diyadin）
ドウバヤズト（Doğubayazıt）
エレシュキルト（Eleşkirt）
ハムル（Hamur）
パトノス（Patnos）
タシュルチャイ（Taşlıçay）
トゥタク（Tutak）

経済

主な産業は、草食動物の牧畜です。また、山岳地帯は観光客を魅了しており、登山や夏季の長旅、冬季のスキーが盛んです。イサクパシャ宮殿や、付近にある世界第二のクレーターも観光客に人気があります。

アール県は、その地理的な特徴と歴史的な背景から、多様な側面を持つ地域です。美しい自然景観と、様々な民族が交錯してきた歴史の痕跡は、訪れる人々を魅了し続けています。

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