イェンス・ヨハンソン

イェンス・ヨハンソン：速弾きキーボーディストの軌跡

イェンス・ヨハンソン（Jens Johansson）は、1963年11月2日スウェーデン生まれのキーボーディスト、ピアニストです。ネオクラシカルメタル、フュージョン界隈でその名を知られ、特に速弾きキーボーディストとしての評価を確立しています。一時期「ヤンス・ヨハンソン」と表記されていたこともあります。

音楽一家に生まれた彼は、父にジャズピアニストのヤン・ヨハンソン、兄に元ハンマーフォールのドラマー、アンダース・ヨハンソンを持ちます。

生い立ちと初期の活動

幼少期から兄アンダースと共にピアノを習い始め、クラシック音楽に加え、ドン・エイリー、ジョン・ロード、エディ・ジョブソンといったキーボーディストから影響を受けました。1982年にはフュージョンバンド、Slemを脱退。ヨナス・ハンソン率いるシルヴァー・マウンテンに加入します。同バンドの1stアルバム『Shakin' Brains』に参加後、イングヴェイ・マルムスティーンに誘われ、シルヴァー・マウンテンを脱退。兄アンダースも後に脱退し、マルムスティーンのバンド、ライジング・フォースに合流しました。

ライジング・フォースからの独立

ライジング・フォースでは、その卓越した演奏技術でバンドの音楽性を大きく向上させましたが、1980年代後半、当時のヴォーカリスト、ジョー・リン・ターナーとの確執が表面化。アルバム『Odyssey』に伴うツアーを最後に、兄弟揃ってバンドを脱退しました。

多彩な活動とストラトヴァリウスへの加入

1989年にはディオに参加し、アルバム『Lock Up The Wolves』（1990年）を発表しますが、ロニー・ジェイムス・ディオのブラック・サバス再加入により、バンドは活動を停止します。1990年代には、兄アンダースとの共同名義『ヨハンソン』で作品を発表したり、ソロアルバムをリリースするなど、ヘヴィメタル衰退期にあってもジャンルに捉われない積極的な活動を展開。現在も様々なアーティストのアルバムやツアーにゲストプレイヤーとして参加しています。

1995年、フィンランドのメロディックスピードメタルバンド、ストラトヴァリウスに加入。1996年のアルバム『エピソード』以降、バンドの主要メンバーとして活躍しています。2003年にドラムスのヨルグ・マイケルが一時脱退した際、兄アンダースに加入を打診するも、音楽性の違いから断られています（後にヨルグは復帰）。2004年には、解散寸前のストラトヴァリウスのメンバーをまとめるために奔走。2008年のティモ・トルキによる一方的な解散宣言以降は、トルキとの関係が悪化しています。

2016年6月には、リッチー・ブラックモアズ・レインボーの回帰ライブに参加しました。

人柄とエピソード

イェンス・ヨハンソンは、兄アンダースと共に行ういたずら好きとしても知られています。常に接着剤を持ち歩き、様々なものに付けてしまうというエピソードも。ライジング・フォース時代には、隣のレコーディングスタジオにマドンナがいることを知り、ふざけたアレンジの「ライク・ア・ヴァージン」を演奏してマドンナを怒らせたこともあります。ストラトヴァリウスのDVD『Infinite Visions』には、彼がトイレを爆破する映像が収録されています。また、2004年のライブ中には、ティモ・トルキの脚に小便をかけ、ライブ後に謝罪したという逸話も残っています。

ライジング・フォース時代、ファッションに無頓着だったヨハンソン兄弟に対し、イングヴェイ・マルムスティーンが「髪にパーマをかけて、ちゃんとした服を着ろ」「お前らが浮浪者みたいな格好をしているから俺の評判が落ちるんだ」と激怒したこともありました。当時はヨハンソン兄弟もイングヴェイの意見に従ったそうです。（BURRN!増刊メタリオン31号より）現在は長髪こそ維持しているものの、ヘヴィメタルアーティストらしい服装をすることはあまりありません。

兄アンダースと共に設立したヘプタゴン・レコードからは、父ヤン・ヨハンソンの音源がCD化されており、イェンス自身のソロ名義アルバムも同レーベルからリリースされています。

コンピュータオタクとしての一面

メカニックに強く、自他共に認めるコンピュータオタクとしても有名で、携帯電話を自分で修理してしまうほど。学校卒業後、音楽活動を始めるまでの6ヶ月間は、ストックホルムの総合病院でコンピュータープログラマーとして勤務していました。現在も初期型のAtari STを所有し、C言語でコード化されたソフトウェアを愛用しています。2004年のストラトヴァリウス脱退騒動の際には、公式サイトのフォーラムがハッキングされたことを発見し、ハッカーから公式サイトを守ることに貢献しました。現在はストラトヴァリウス公式サイトのフォーラム管理人を務め、自らも積極的に書き込みを行っています。

イェンス・ヨハンソンの音楽性は、ネオクラシカルメタル、フュージョン、プログレッシブメタルなど多岐に渡ります。その卓越した演奏技術と幅広い音楽性で、彼は今後も多くの音楽ファンを魅了し続けることでしょう。

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