イエス・イット・イズ

イエス・イット・イズ：ビートルズの隠れた名曲

1965年、シングル盤『涙の乗車券』のB面として世に送り出されたビートルズの楽曲「イエス・イット・イズ」。レノン＝マッカートニー名義ながら、中心人物はジョン・レノンです。ポール・マッカートニーはレノンのアイデアを元に仕上げの手助けをしたと語っています。

この曲は、複雑で不協和音を含む3声コーラスと、ジョージ・ハリソンによる初期のペダルトーンを駆使したギターが特徴です。音楽評論家のイアン・マクドナルドは、そのサウンドについて「豊かで珍しい倍音列の動きをしている」と評しています。独特のハーモニーは、プロデューサーであるジョージ・マーティンの提案により、バーバーショップカルテットのスタイルを取り入れたものと言われています。

制作背景とレコーディング

レノンは1980年の『プレイボーイ』誌のインタビューで、「『ジス・ボーイ』を書き直そうとしたがうまくいかなかった」と語っており、本作が別の曲の改作である可能性を示唆しています。

レコーディングは1965年2月16日、EMIレコーディング・スタジオで行われました。ジョージ・ハリソン作の「アイ・ニード・ユー」と共に収録され、5時間に渡るセッションの中でリズムトラックは14テイクも録音されました。その後、レノン、マッカートニー、ハリソンの3人によるハーモニーボーカルのレコーディングに3時間を費やしました。

リリースと評価

イギリスとアメリカで同時リリースされ、『涙の乗車券』のB面として発売されました。アメリカ盤では、誤って映画『ヘルプ!』からの楽曲であると表記されましたが、実際は映画には使用されていません。B面ながらBillboard Hot 100で最高46位を記録するなど、高い人気を獲得しました。

イギリスのオリジナルアルバムには収録されていませんでしたが、アメリカのキャピトル編集盤『ビートルズVI』に収録され、その後も『ラヴ・ソングス』『レアリティーズ』『パスト・マスターズ Vol.1』『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』など、様々なコンピレーションアルバムに収録されています。『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』には、テイク2とテイク14を繋ぎ合わせたバージョンが収録されています。

イアン・マクドナルドは、A面曲である『涙の乗車券』と共に、「ビートルズがこれまでにレコーディングした楽曲よりも心理的に深い」「ソングライターとしてのビートルズの大きな発展がみられる楽曲」と高く評価しています。

参加メンバー

ジョン・レノン：ダブルトラックのリードボーカル、セミアコースティックギター
ポール・マッカートニー：ハーモニーボーカル、ベース
ジョージ・ハリソン：ハーモニーボーカル、リードギター
リンゴ・スター：ドラム、タンバリン

カバーバージョン

「イエス・イット・イズ」は、多くのアーティストによってカバーされています。代表的な例として、以下のアーティストが挙げられます。

オリヴィエ・デスパ（フランス語カバー「Ne mets pas de bleu」）
ピーター・セラーズ
ドン・ヘンリー
スコット・マッカール

参考文献

Harry, Bill (2000). The Beatles Encyclopedia: Revised and Updated. London: Virgin Publishing.
Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions. New York: Harmony Books.
MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (Second Revised ed.). London: Pimlico (Rand).
Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years from Now. Random House UK.
Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono*. New York: St. Martin's Press.

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