イギリス国鉄315形電車

イギリス国鉄315形は、1980年から1981年にかけて製造された近距離通勤輸送を担う交流電車です。同時期に登場した313形、314形、507形、508形などと同様、「1972年デザイン」と呼ばれる軽量なアルミ製車体を採用しており、交流電化区間である25,000ボルトの架線電圧に対応した車両として設計されました。特に314形とは多くの設計要素を共有しています。

導入背景と車両概要

本形式は、主にグレート・イースタン本線のロンドン近郊区間、具体的にはロンドン・リヴァプールストリート駅からシェンフィールドに至る区間などで長年使用されていた306形電車の後継車両として開発されました。合計で61編成、各編成4両という構成で製造されています。

編成は4両を1ユニットとしており、動力を持つ先頭車（Driving Motor Standard Open, DMSO）2両と、パンタグラフを備えた中間付随車（Pantograph Trailer Standard Open, PTSO）、そしてもう1両の中間付随車（Trailer Standard Open, TSO）から成ります。近距離での使用を想定しているため、長距離列車のような1等室やトイレの設備は設けられていません。1編成あたりの定員は318名です。

運行形態としては、基本的な4両単独での運用のほか、2編成を連結した8両編成が一般的です。さらに、最大で3編成を連結した12両編成での運用実績もあります。

車両の技術的な特徴として、各DMSO車両には4台の主電動機が搭載されています。製造時期によって異なり、315801編成から315841編成にはBrush社製TM61-53が、315842編成以降の315861編成まではGEC社製G310AZが採用されました。その他の主要機器配置として、DMSOにはコンプレッサ、PTSOにはパンタグラフに加え、バッテリーとその充電器、主変圧器、真空遮断器などが搭載されています。

乗降扉については、当初は空気圧式のドアエンジンが使用されていましたが、後に全ての編成でより信頼性の高い電気式に換装されています。

車両の改修

2004年半ばからは、ボンバルディア社によって車両の改修プログラムが実施されました。車内の座席配置は、オリジナルの背もたれの低い3+2列クロスシートのまま維持されたため、定員に変更はありません。しかし、初期に改修を受けた一部の編成では、前面のライト配置などに外観上の変更が加えられました。

民営化後の運用と現状

国鉄の民営化後、315形は複数の運行会社によって運用されました。2004年4月1日までは、グレート・イースタン本線系統のフランチャイズでファースト・グレート・イースタン社が、ウェスト・アングリア本線系統ではウェストアングリア・グレートノーザン社がそれぞれ一部編成をリースして運用していました。

2004年4月1日以降はフランチャイズの再編により、315形全編成がグレーター・アングリアの運行範囲に集約され、ナショナル・エクスプレスグループ傘下の「ワン」社（後にナショナル・エクスプレス・イースト・アングリアに改称）にリース先が一本化されました。その後、運行事業者の変更を経て、2012年2月からはアベリオ系列のグレーター・アングリア社によって現在に至るまで運用されています。

現在の主な運行区間は以下の通りです。

グレート・イースタン本線および関連支線
ロンドン・リヴァプールストリート駅〜シェンフィールド駅間
ロムフォード駅〜アップミンスター駅間
限定運用や代走により、サウスエンド・ヴィクトリア駅やシェンフィールド駅以北へ入線することもあります。
ウェスト・アングリア本線および関連支線（リー・ヴァレー・ラインズ）
ロンドン・リヴァプールストリート駅〜エンフィールド・タウン駅間
ロンドン・リヴァプールストリート駅〜チンフォード駅間
ロンドン・リヴァプールストリート駅〜チェサント駅間（セブン・シスターズ駅経由）
代走などにより、チェサント駅以北へ入線することもあります。

当初はグレート・イースタン本線系統とウェスト・アングリア本線系統で充当される編成が分かれていましたが、現在では編成による区別はなくなり、両区間で共通運用されています。

将来計画

今後、障害者差別禁止法への対応として、車両の内装更新が計画されています。また、カーディフ近郊区間の電化進捗に伴い、グレーター・アングリアから一部の315形が転出する予定があります。

愛称付き編成

一部の編成には特別な愛称が付けられています。これまでに以下の5編成にネーミングが施されました。

315812: "London Borough of Newham Host Borough 2012 Olympics Bid"（現在は使用されていません）
315817: "Transport for London"
315829: "London Borough of Havering Celebrating 40 Years"
315845: "Herbie Woodward"
315857: "Stratford Connections"

登場から40年以上が経過した現在も、イギリス国鉄315形はロンドン近郊の通勤輸送を支える重要な役割を担っています。

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