イクエイトリアル・スター

概要

『イクエイトリアル・スター』（原題：The Equatorial Stars）は、プログレッシブ・ロック・ギタリストのロバート・フリップと、アンビエント・ミュージックのパイオニアであるブライアン・イーノが、「フリップ&イーノ」名義で2004年にリリースしたスタジオ・アルバムです。この作品は、二人が過去に共同制作した音楽の要素を受け継ぎつつ、新たな探求を示唆するものとして注目されました。

背景

本作は、フリップ&イーノ名義のスタジオ・アルバムとしては、1975年に発表された歴史的な作品『イヴニング・スター』以来、約30年ぶりとなる通算3作目です。長期間の沈黙を経て制作された作品として、リリース前から大きな関心を集めました。ただし、二人のコラボレーションが完全に途絶えていたわけではなく、1979年前後には「ヘルシー・カラーズ」と題された連作を録音しており、これらは1994年のベストアルバム『エッセンシャル・フリップ&イーノ』で初めて陽の目を見ています。

『イクエイトリアル・スター』は、当初はブライアン・イーノの公式ウェブサイトと、ロバート・フリップが主宰するディシプリン・グローバル・モービル（DGM）の公式ウェブサイトを通じて、限定販売という形で世に出ました。その後、翌2005年にはより広いリスナーに向けて一般流通が開始され、多くの音楽愛好家がこのアルバムを手に取れるようになりました。

アルバム全体を通しての一貫したコンセプトとして、収録されている楽曲のタイトルは、すべて実在する天体の名前から付けられています。また、ブライアン・イーノ自身が手掛けたアルバムジャケットのアートワークには、当時のフィリップス社が出版していた星座早見盤のデザインが引用されており、音楽だけでなく視覚的な面でも天体というテーマが表現されています。

評価

リリース後、『イクエイトリアル・スター』は音楽批評家から様々な評価を受けました。

音楽レビューサイト「オールミュージック」のショーン・ウェスターガードは、このアルバムに5点満点中4点を与えました。彼は、『イヴニング・スター』が彼らの初期作品である『ノー・プッシーフッティング』から自然に発展したように、『イクエイトリアル・スター』もまた、これまでのフリップ&イーノの共作に共通する要素を保ちつつ、さらに音楽的な進化を遂げた作品であると高く評価しています。

一方、オンライン音楽メディア「ピッチフォーク」のドミニク・レオーネは、10点満点中7.8点と評価しました。彼は、特に一部の楽曲でリズム要素が完全に排除されている点に注目し、そのサウンドデザインが、クラスターとイーノのコラボレーション以降の世代にあたるハフラー・トリオやリチャード・シャルティエといったアーティストたちの音楽性に近いと指摘しました。また、レオーネはイーノの音作りが、彼が若き日にデジタル技術を駆使して制作した作品よりも温かみがあり、驚くほど1970年代に残された彼の作品群との間に一貫性が見られる点も特筆しています。

これらの評価は、『イクエイトリアル・スター』が単なる過去の再現ではなく、二人のアーティストが長年の経験を経て到達した、新たな段階を示す作品であることを示唆しています。

収録曲

アルバムに収録されている全8曲は、すべてロバート・フリップとブライアン・イーノの共作名義となっています。

1. メイサ - "Meissa" - 8:08
2. リラ - "Lyra" - 7:45
3. タラゼド - "Tarazed" - 5:03
4. ルプス - "Lupus" - 5:09
5. アンカ - "Ankaa" - 7:01
6. アルタイル - "Altair" - 5:11
7. テレベルム - "Terebellum" - 9:40

(合計収録時間: 49:02)

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