イグルー

イグルーの概要

イグルー（イヌクティトゥット語：iglu）はカナダ北端のマッケンジー河口付近からラブラドル半島にかけての地域で広く使用されている、一時的な住居の形態です。このシェルターは主に狩猟を行う際に設営され、圧雪ブロックを利用して組み立てられます。イヌクティトゥット語においては、イグルーという言葉は皮や石で作った構造物、さらには恒久的な住宅も含んだ広義の概念ですが、日本語や他の西洋言語では通常、圧雪ブロックから成る短期間のシェルターを指します。

イグルーの歴史と利活用

古くからイヌイットの人々は、革製のテントに住みながら、魚や狩猟した動物を求めて移動を繰り返してきました。これらの生活様式から発展したのがイグルーであり、雪と氷が豊富に存在する地域では、どこでも容易に指定してつくることが可能です。この特性のおかげで、イヌイットたちは生き生きとした移動生活を維持してきました。

かつて「エスキモーの家」と称されたイグルーですが、20世紀末以降、イヌイットの遊動性は低下しています。現在でも一部のイヌイットは冬季にアザラシ狩りを行うためにイグルーを構築しますが、定住生活を行う多くのイヌイットはこの居住形式を使用しなくなっています。また、登山や雪が多く積もった地域でのキャンプ時にテントの代わりにイグルーを利用することもあります。

イグルーの構造と作り方

イグルーの基本的な構造は、雪を約1メートル×0.5メートル、厚さ30センチのブロックに切り出して、下から螺旋を描くようにドーム状に積み上げていくことから始まります。この際、ブロックを交互に積むことで構造的な強度が確保され、力の分散が図られます。入り口は、風による吹き込みを避けるため、通路の軸線から外れた位置に配置されることが一般的です。

イグルーのドーム型の形状は、力学的に安定しており、強風を受け流し、外からの重さを均等に分散させることができるため、非常に実用的です。一般的には半球状のドームが主流ですが、場合によっては平らな屋根のタイプも存在します。他にも流木や動物の骨といった資材も利用されることがあります。

イグルーの内部

イグルー内部の高さは約2メートル弱であり、外の寒気や強風を遮るため、意外と温かい環境が保たれています。内部構造は、主屋、通路、肉の貯蔵庫、衣類や道具の収納スペースなどに分かれています。主屋は通常、最も奥に配置され、床は寝床用に一段高く作られます。

また、寒さをしっかりと遮断するために、床や壁にはアザラシの毛皮が敷かれ、火を利用して調理や暖房も行うことが可能です。イグルーには窓や換気用の小穴も設けられることがあり、快適に過ごせる工夫がなされています。

このように、イグルーはイヌイットの日常生活の知恵と工夫を反映した、独自の文化的遺産といえます。今後もその形態や生き様が語り継がれていくことが期待されます。

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