イゴール・キリロフ

イーゴル・アナトリエヴィチ・キリロフの生涯

イーゴル・アナトリエヴィチ・キリロフは、1970年7月13日にロシア・ソビエト社会主義共和国のコストロマで生まれました。彼はソ連軍に入隊し、コストロマ高等軍事司令部化学防衛学校を卒業後、軍人としてのキャリアをスタートさせました。その後もセミョーン・チモシェンコ名称NBC防護陸軍士官学校で学び、専門性を高めました。

2014年9月には、キリロフはセミョーン・チモシェンコ名称NBC防護陸軍士官学校の校長に任命され、教育者としての役割も担いました。2017年4月には、ロシア連邦軍NBC防護部隊司令官に就任し、ロシア軍の化学兵器防護の中核を担う存在となりました。

キリロフは、新型多連装ロケット砲TOS-2「トソチカ」の開発と採用にも深く関与しました。この兵器は、ロシア軍の戦力強化に貢献したとされています。

ウクライナ侵攻と国際的な制裁

2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻において、キリロフは軍事行動に直接関与したとされ、国際的な制裁対象となりました。カナダ、ウクライナ、イギリスなど、多くの国が彼の資産を凍結し、渡航を制限しました。

米国務省によると、キリロフの指揮下でロシア軍は、第一次世界大戦で広く使われた窒息剤クロロピクリンや催涙ガスを戦場で使用したとされています。さらに、化学兵器禁止条約で禁止されている刺激性化学物質CSやCNを装備した戦闘用手榴弾も使用されたとの指摘があります。ウクライナは、キリロフがロシア・ウクライナ戦争中に禁止されている化学兵器を使用したとして、欠席裁判で起訴しました。

暗殺とその後

2024年12月17日、キリロフはモスクワで暗殺されました。彼は副官とともに自宅を出た際に、電動スクーターに仕掛けられた爆弾によって爆死しました。爆発の威力は凄まじく、周辺の建物の窓ガラスを割るほどでした。爆弾には、過去のテロ事件で使用されたものと同程度の爆発物が使用されていたとされています。

ウクライナ保安庁は、この暗殺を認め、「戦争犯罪者であり、正当な標的だった」と声明を発表しました。この事件は、ロシアとウクライナ間の緊張をさらに高めることとなりました。

暗殺後、ロシアの政府高官や軍幹部は、キリロフを称賛し、ウクライナへの報復を誓いました。ドミトリー・メドヴェージェフ元大統領は「避けられない報復」を宣言し、マリア・ザハロワ報道官はキリロフを「恐れを知らない」人物と評しました。国家院議長は「科学者でもあった」と述べ、その死を悼みました。

一方、米国務省報道官は、アメリカ政府は暗殺に関与していないとしつつ、キリロフの「残虐行為」と化学兵器の使用を非難しました。

キリロフの暗殺は、ロシアとウクライナの紛争が激化する中で発生し、その後の両国関係に大きな影響を与えることになりました。

まとめ

イーゴル・アナトリエヴィチ・キリロフは、ロシア軍の高官として、軍事技術の開発やウクライナ侵攻に関与しました。その一方で、国際的な制裁を受け、化学兵器の使用疑惑が浮上するなど、毀誉褒貶の激しい人物でもありました。彼の暗殺は、紛争の複雑さを浮き彫りにし、多くの議論を呼んでいます。

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