コストロマ

ロシア古都コストロマ：歴史と文化の薫るヴォルガの街

コストロマは、ロシア連邦のコストロマ州に位置する歴史都市であり、州都でもあります。人口は約26万人（2021年時点）で、首都モスクワから北東へ約372km、ヴォルガ川とその支流であるコストロマ川の合流地点に位置しています。古くからの歴史を持つこの都市は、ロシアの歴史、文化、そして建築様式を垣間見ることができる魅力的な場所です。

キエフ大公とモンゴル侵攻

コストロマの起源は12世紀半ばに遡ると考えられています。有力な説としては、キエフ大公ユーリー・ドルゴルーキーが1152年に建設したというものです。年代記に初めて登場するのは1213年ですが、それ以前から存在していた可能性が高いとされています。 ルーシ東部の他の都市と同様に、1238年にはモンゴル帝国の侵攻を受け、略奪被害を受けました。この当時、コストロマは小さな公国であり、アレクサンドル・ネフスキーの弟であるヴァシーリー・ヤロスラヴィチが統治していました。ヴァシーリーは1271年にウラジーミル大公の地位を継承するも、コストロマに居を構え続け、彼の後継者達も半世紀以上にわたってコストロマ公国を治めました。しかし、最終的にはモスクワ公イヴァン1世によって併合されました。

モスクワ公国と交易の中心地

モスクワ公国最北部の都市の一つであったコストロマは、モスクワへの敵対勢力からの避難場所としても重要な役割を果たしました。1382年、1408年、そして1433年にはモスクワ大公が敵の侵攻を避けてコストロマに逃れてきた記録が残っています。一方、1375年にはノヴゴロドの河船賊ウシクイニキの襲撃を受け、略奪されています。16世紀に入ると、モスクワ大公国とイギリス、オランダとの北極海交易（ムスコヴィ会社）が盛んになり、アルハンゲリスクとモスクワを結ぶ交易路の中継地としてコストロマは大きく発展しました。この発展には、ボリス・ゴドゥノフの貢献も大きいです。ボリス・ゴドゥノフは、この地方の下級貴族出身で、先祖はタタール人だったと言われています。彼はイパティエフ修道院を壮麗に改修し、コストロマに多くの石造建築物を建設しました。

ロマノフ朝とイパティエフ修道院

ボリス・ゴドゥノフによる建築事業が完了した頃、リューリク朝が断絶し、ロシアは「大動乱」の時代を迎えます。コストロマは、この大動乱の期間中、ポーランド・リトアニア軍に二度も占領され、略奪されました。イパティエフ修道院に立てこもったポーランド軍の制圧には、6ヶ月もの歳月を要しました。この戦いで、コストロマの農民イワン・スサーニンは英雄として名を馳せ、外国軍侵略に対する抵抗の象徴となりました。

その後、ロマノフ朝の初代皇帝ミハイル・ロマノフが少年時代をイパティエフ修道院で過ごしたことは有名です。1612年、ミハイルはここでツァーリに推戴され、1613年にはゼムスキー・ソボル（全国会議）で正式にツァーリに選出されました。以来、ロマノフ朝の歴代皇帝はコストロマ、特にイパティエフ修道院を特別な保護の下に置きました。ミハイル・ロマノフが住んでいた木造の家は保存されており、1652年にはイパティエフ修道院に巨大な至聖三者大聖堂が再建され、その美しいフレスコ画やイコノスタシスは現在も人々を魅了しています。

新古典主義都市計画

1773年、大火で荒廃したコストロマは、川沿いを中心に放射状に広がる街路を備えた新しい都市計画に基づいて再建されました。エカチェリーナ2世が扇を地図上に落としたという逸話も伝えられており、この計画に基づいた優雅な新古典主義建築と都市計画は、総督の宮殿、火の見塔、ヴォルガ川河岸のロトンダ、アーケードと商人のための教会のある中央市場など、現在もよく保存されています。

近年の出来事

近年では、2022年11月6日に市内のナイトクラブで発生した大規模火災が大きな悲劇として記憶されています。この火災では13名以上が犠牲となりました。

コストロマは、歴史と文化、そして建築の調和が美しい街です。その歴史的建造物、そしてヴォルガ川沿いに広がる美しい風景は、多くの観光客を魅了し続けています。

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