イジラク (衛星)

イジラク (Saturn XXII Ijiraq)

イジラクは、土星の第22番目の衛星であり、不規則衛星のグループであるイヌイット群に属しています。この衛星は、その発見から名称、軌道、そして物理的特徴に至るまで、興味深い特徴を多く持っています。

発見

イジラクは、2000年9月23日にブレット・J・グラドマン、ジョン・J・カベラーズらの研究チームによって発見されました。この発見は、同年11月18日に国際天文学連合のサーキュラーで公表され、当初は「S/2000 S 6」という仮符号で呼ばれていました。観測にはカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡が用いられました。

名称の由来

イジラクという名前は、発見者の一人である天文学者ジョン・J・カベラーズが提案しました。この名称は、イヌイットを題材にした児童図書『Hide and Sneak』に登場する架空のキャラクターに由来します。カベラーズは、発見当初、この衛星にふさわしい名前をなかなか見つけることができませんでした。そんな中、子供にイヌイットの物語を読み聞かせている際に、この衛星が発見しにくいことと、物語の登場人物イジラクが隠れんぼをしている様子が似ていると感じ、名称候補として思いつきました。また、土星の衛星が非常に低温であることと、発見チームにカナダ人、ノルウェー人、アイスランド人がいたことも、北極圏に似た環境を連想させた要因となりました。彼は、著者のマイケル・アルヴァールク・クスガク氏に許可を得て、この名称を提案しました。2003年8月8日にこの名称は正式に承認され、「Saturn XXII」という確定番号も与えられました。

軌道の特徴

イジラクは、土星から約1141万km離れた軌道を、451日かけて公転しています。この軌道は、同じイヌイット群に属するキビウクの軌道と非常に似ています。イジラクは、キビウクと同様に古在共鳴の状態にあると考えられており、そのため、軌道離心率が上昇する際には軌道傾斜角が減少し、逆に軌道離心率が減少する際には軌道傾斜角が増加するという周期的な変化が見られます。また、近点引数は90°を中心に、60°の振幅で振動しています。

物理的特徴

イジラクの大きさの詳細は不明ですが、アルベドを0.06と仮定すると、半径は約6kmと推定されています。この衛星は、イヌイット群の中では比較的赤い色をしており、特にスペクトルの傾きは他のイヌイット群の衛星の2倍も大きく、100nmあたり20%の変化を示します。この特徴は、太陽系外縁天体であるセドナに似ていますが、他の不規則衛星にはあまり見られないものです。さらに、他のイヌイット群の衛星では、水和物の存在を示す0.7µmでの弱い吸収が見られるものの、イジラクでは検出されていません。

これらの特徴から、イジラクは他のイヌイット群の衛星とは異なる起源や進化の過程を持っている可能性が示唆されています。

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