イスタブラク

イスタブラク (Istabraq) は、アイルランドを代表する競走馬として、その名を後世に刻み込んだ名馬です。

その血統は、名種牡馬サドラーズウェルズを父に持ち、エプソムダービー優勝馬セクレトを半兄、日本の障害競走で活躍したロードプリヴェイルを甥に持つなど、サラブレッドとしての輝かしい家系を受け継いでいました。そのため、平地競走での活躍が期待されましたが、実際には期待を大きく下回る結果に終わりました。1994年から1995年にかけての2年間で、下級レースでわずかに2勝しか挙げることができなかったのです。

転機が訪れたのは、ジョン・ダーカンとの出会いでした。当時、ジョン・ゴスデン調教師の助手だったダーカンは独立し、イスタブラクの障害競走転向を決意。ダーカンはイスタブラクの調教にあたり、その才能を開花させようと尽力しました。しかし、運命のいたずらでしょうか、ダーカンは白血病に侵されてしまいます。治療に専念するため、ダーカンはイスタブラクを友人であるエイダン・オブライエンに預けることになりました。

1996年12月、イスタブラクは障害競走にデビューします。初戦こそ惜しくも2着に敗れましたが、その後は5連勝を飾るなど、めきめきと頭角を現し始めました。そして迎えた1995/96年シーズン、アイルランドのレパーズタウン競馬場で行われたAIGヨーロッパチャンピオンハードル、そしてイギリスのチェルトナム競馬場で行われたチャンピオンハードルを制覇。短距離ハードルの最高峰のレースを立て続けに制覇したのです。しかし、ダーカンはAIGヨーロッパチャンピオンハードルの直前に亡くなってしまいます。ダーカンの葬儀はレース前日、レパーズタウン競馬場最寄りの教会で行われました。この出来事が、イスタブラクとオブライエンの絆をより一層深めたことは言うまでもありません。そして、イスタブラクはその後もオブライエンの厩舎に所属し続けることになります。

多くのハードル競走の有力馬は、その後チェイス（障害競走の一種）へと活躍の場を移すのが一般的です。しかし、イスタブラクは最後までハードル競走にこだわり続けました。そして、2001年までにAIGヨーロッパチャンピオンハードルで4連覇、チャンピオンハードルで3連覇という偉業を達成します。史上初のチャンピオンハードル4連覇も期待されましたが、2001年のチャンピオンハードルは口蹄疫の影響でチェルトナム・フェスティバルが中止となり、開催されませんでした。そして、翌2002年のチャンピオンハードルで故障、競走中に競走中止となり、これがイスタブラクの競走生活に幕を閉じました。

2024年7月25日、イスタブラクは32歳でその生涯を終えました。その輝かしい戦績、そして数々の困難を乗り越えてきたその生涯は、多くの競馬ファンに深い感動と記憶として刻まれています。

イスタブラクのシーズン別戦績は以下の通りです。

平地競走
1994年：1戦0勝
1995年：9戦2勝
1996年：1戦0勝

障害競走
1996/97年：6戦5勝 (ロイヤル＆サンアライアンスノービスハードルを含む)
1997/98年：6戦5勝 (ジョンジェームズマクメイナスメモリアルハードル、AIGヨーロッパチャンピオンハードル、チャンピオンハードルを含む)
1998/99年：7戦7勝 (ジョンジェームズマクメイナスメモリアルハードル、AIGヨーロッパチャンピオンハードル、チャンピオンハードル、エイントリーハードル、シェルチャンピオンハードルを含む)
1999/00年：5戦4勝 (ジョンジェームズマクメイナスメモリアルハードル、AIGヨーロッパチャンピオンハードル、チャンピオンハードルを含む)
2000/01年：3戦1勝 (AIGヨーロッパチャンピオンハードルを含む)
2001/02年：2戦1勝

イスタブラクの血統については、ブードワール#ゲイホステス系を参照ください。

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