イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団（Israel Philharmonic Orchestra、略称：IPO）は、イスラエルを代表するオーケストラであり、世界でも有数のオーケストラとして知られています。

歴史

1936年、イスラエル建国以前のイギリス委任統治領パレスチナ時代に、ヴァイオリニストのブロニスワフ・フーベルマンの呼びかけによって、ナチス・ドイツの迫害から逃れたユダヤ人音楽家を中心にパレスチナ管弦楽団として創設されました。同年12月26日には、テルアビブでアルトゥーロ・トスカニーニの指揮による第1回演奏会が開催されました。1948年のイスラエル建国に伴い、現在の名称であるイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団に改称されました。

創設以来、頻繁な演奏旅行や録音活動を行い、世界的に著名な指揮者を数多く迎えています。特に、ズービン・メータとの関係は半世紀以上に及び、1961年の初共演以来、音楽顧問、音楽監督を経て、1981年からは終身音楽監督を務めました。また、ユダヤ系の指揮者や演奏家との繋がりも深く、レナード・バーンスタインとは1947年から親密な関係を築いていました。

特徴とレパートリー

イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の主なレパートリーは、ベートーヴェン、モーツァルト、メンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキー、マーラーなど、クラシック音楽の巨匠たちの作品です。シェーンベルクのロマン派時代の作品もレパートリーに含んでいます。また、ユダヤ人演奏家に弦楽器奏者が多いことから、J.S.バッハ以降のヴァイオリン協奏曲も重要なレパートリーとなっています。

一方で、ワーグナーは、その反ユダヤ主義的な言動や、ナチス・ドイツの文化的象徴とされた歴史的背景から、タブー視されています。1981年には、ズービン・メータがアンコールでワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』前奏曲を演奏した際、一部の団員が演奏を拒否し、聴衆の間で騒動が発生しました。その後もワーグナーの演奏は強い抵抗を受け、現在でもイスラエルではワーグナーの作品が演奏される機会は限られています。リヒャルト・シュトラウスも、ナチス・ドイツの御用文化人であったとして、ワーグナーと同様の扱いを受けていましたが、1990年代初頭から演奏されるようになり、メータの指揮による録音も存在します。ブルックナーは、ヒトラーが愛好した作曲家でしたが、メータの指揮によって録音が行われています。

主要な指揮者

イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の歴史を彩ってきた主要な指揮者は以下の通りです。

1936年-1938年 音楽顧問：ウィリアム・スタインバーグ
1947年-1990年 桂冠指揮者：レナード・バーンスタイン
1949年-1951年 音楽監督：ポール・パレー
1957年-1959年 音楽監督：ジャン・マルティノン
1968年-1977年 音楽顧問、1977年-2019年 音楽監督：ズービン・メータ（1981年から終身音楽監督）
2020年- 音楽監督：ラハフ・シャニ

外部リンク

Israel Philharmonic Orchestra - 公式ウェブサイト
駐日イスラエル大使館 音楽
* 『イスラエル・フィル誕生物語』牛山剛〔著〕（ミルトス）ISBN 4895860205


イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団は、その創設の背景から、音楽史だけでなく、ユダヤ人の歴史や文化とも深く結びついています。その演奏は、常に人々に感動と深い思索を与え続けています。

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