イタマール・フランコ

イタマール・フランコ：ブラジルの変革者、波乱の政治人生

イタマール・アウグスト・カウティエーロ・フランコ (1930年-2011年) は、ブラジルで長く活躍した政治家です。1992年から1995年まで大統領を務めたほか、上院議員、市長、大使、知事、副大統領など、数々の要職を歴任しました。その生涯は、ブラジルの政治史に大きな足跡を残したと言えるでしょう。

幼少期とキャリアの始まり

サルヴァドールとリオデジャネイロを結ぶ船上で生まれたフランコは、ドイツ系とイタリア系の血を引いていました。船名にちなんで名付けられた彼の少年時代は、ミナスジェライス州ジュイス・デ・フォーラで過ごされました。1955年にジュイス・デ・フォーラ技術学校を卒業し、エンジニアとしてのキャリアをスタートさせます。

政治家としての活躍

1950年代半ば、フランコは政界入りを果たします。ジュイス・デ・フォーラの市会議員、副市長を経て、市長を2期務めました。その後、ミナスジェライス州から連邦上院議員に当選。軍政時代の合法野党であるブラジル民主運動党の副党首も務めるなど、政治家としての基盤を築いていきました。

上院議員在任中は、南アフリカ共和国などの人種差別主義国家との国交断絶を提案するなど、積極的な活動を展開。労働者の権利向上、妊娠中絶の合法化、連邦制強化など、幅広い政策提言を行ったほか、死刑制度の復活には反対の立場を明確に示しました。

副大統領から大統領へ

1989年、大統領選挙でフェルナンド・コロール・デ・メロの副大統領候補に選ばれ、当選を果たします。しかし、コロール大統領の汚職疑惑により、1992年に大統領弾劾。フランコは大統領代行を経て、同年12月、正式に大統領に就任しました。就任時の世論調査では、彼を知る国民は少数派でした。

大統領としての取り組み

就任当時、ブラジルは深刻な経済危機に直面していました。インフレ率は1000％を超え、国民生活は大きな打撃を受けていました。フランコ大統領は、フェルナンド・エンリケ・カルドーゾを財務相に任命し、「レアル計画」を実施。この計画は、経済の安定化とインフレ抑制に成功しました。

大統領就任直後には、自身の私有財産の目録を公表するなど、透明性を重視した政治姿勢を示しました。バランス重視の内閣を組み、議会との協調を重視した政治は、高い支持率につながりました。また、政治体制と統治体制に関する国民投票を実施し、共和制と大統領制を国民の意思で確認しました。

外交面では、南アメリカ全域の自由貿易圏構想を提唱し、国際的な評価を得ました。また、核不拡散条約の批准など、国際協調にも積極的に取り組んだものの、外交能力は低いと評価する声もありました。

晩年と最期

大統領退任後も、ポルトガル大使や米州機構大使などを歴任。1998年にはミナスジェライス州知事選に出馬し、当選を果たしました。しかし、州債のモラトリアム発動は、全国的な経済危機を悪化させる結果となりました。その後も、イタリア大使を務めるなど政治活動を続けました。2010年の総選挙で上院議員に当選し、その任に就いたまま、2011年7月、白血病のため死去しました。

まとめ

イタマール・フランコは、船上で生まれ、エンジニアから政治家へと転身した、ブラジル政治史に大きな影響を与えた人物です。経済危機からの脱却、国民投票の実施、国際協調への取り組みなど、その政治活動は多岐にわたります。一方で、神経質な面や政治手法への批判など、様々な評価があります。しかし、彼の政治人生は、ブラジル、そして世界に大きな足跡を残したことは間違いありません。

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