イタリア国鉄ETR300電車

ETR300電車（セッテベッロ）の概要

イタリア国鉄のETR300電車、通称「セッテベッロ」は、1950年代に登場した高速列車です。この列車は、イタリアの鉄道史における象徴的な存在として、長い間多くの人々に親しまれていました。本記事では、セッテベッロの歴史、構造、運行の変遷などを詳しく見ていきます。

登場の背景

1945年、第二次世界大戦後のイタリアでは、鉄道車両が必要とされていました。特に、戦前に活躍したETR200形の多くが老朽化し、運用が難しくなっていました。この状況を受けて、イタリア国鉄（FS）は新たなラグジュアリートレインの製造を計画し、1952年にセッテベッロの製作が始まりました。最初の編成（ETR 301）が1953年3月に営業運転を開始し、以降8編成が登場しました。

革新的なデザインと性能

セッテベッロのデザインは非常に革新的で、当時の航空機のスタイルを反映しています。特に、先頭車両の丸みを帯びた形状やパノラマガラスからの前面展望は、その後の鉄道デザインにも影響を与えました。車体はグレー地にマグノリアグリーンの帯が施され、洗練された美しさを誇っていました。

ETR300は2600kWの出力を持ち、最高速度は200km/hに達しました。曲線が多いミラノとローマ間の運行では所要時間が約5時間45分でしたが、1977年にはフィレンツェ＝ローマ間が高速度化され、速度向上が実現しました。1958年には、ピアチェンツァ - ボローニャ間での走行記録として、平均速度135.5km/hで68分の距離を走破することに成功しました。

編成の詳細

セッテベッロは、7両編成で3つのユニットに分かれて構成されていました。前後の2両は1等車、中央の3両は食堂車や荷物車を含んでおり、列車全体として高い快適性を提供しました。また、著名なデザイナーによる内装デザインは、旅客に特別な体験をもたらすものでした。営業開始当初の定員は160名でしたが、1959年の追加編成により190名に増えました。

運行の変遷とその後

セッテベッロは1970年代までイタリア国鉄のフラグシップ的な存在として運用されていましたが、1980年代に入り、経年劣化が進み新型車両の導入が求められるようになりました。1984年には主要運行から外れ急行列車に転用され、その後も1992年まで運行が続けられました。最終的に、セッテベッロの名を冠した列車は、コロッセオという新しい名称で運行されることとなりました。

ETR250の存在

後に登場したETR250は、セッテベッロを短編成化したもので、1960年ローマオリンピックのために導入されました。この車両は、観光用に改装された編成を含めて数回にわたって運行され、その存在はセッテベッロに新たな視点を加えました。

総括

セッテベッロは、イタリアの鉄道史において忘れられない名列車の一つです。その革新的なデザイン、快適な移動体験、高速性能は、今日でも多くの鉄道ファンに愛され続けています。セッテベッロの歴史を振り返ることで、イタリア鉄道の魅力を再確認できるでしょう。

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