イット・カムズ・アット・ナイト

『イット・カムズ・アット・ナイト』

2017年にアメリカ合衆国で製作・公開されたホラー映画。『イット・カムズ・アット・ナイト』（原題:It Comes at Night）は、監督トレイ・エドワード・シュルツ、主演ジョエル・エドガートンにより手掛けられた作品である。

概要

世界が未知の病原体の脅威に晒され、社会機能が麻痺した終末的な状況下。主人公ポールは、自身の家族をこの恐るべき病から守るため、外部との接触を一切断ち、森の奥深くにある家で閉鎖的な生活を送っていた。感染を恐れるポールは、徹底したルールを設け、家族にその順守を厳しく求めた。しかし、ある日、安息の地を求める別の家族が彼の家の前に現れる。彼らもまた、生き残るための場所を探し求めていたのだ。

ポールは逡巡の末、彼らを受け入れるという苦渋の決断を下す。共同生活は当初、協力的な雰囲気のもとで始まった。しかし、先の見えない恐怖と不安、そして互いの素性に対する疑念が、閉鎖された空間にじわじわと不信感を植え付けていく。外部からの見えない脅威に加え、家の中で募る相互不信と狂気が、登場人物たちの精神を蝕んでいく。特に主人公ポールは、極限状況下で家族を守ろうとするあまり、その内面に潜んでいたかのような恐ろしい一面があらわになり始める。

本作は、派手な特殊効果や直接的な恐怖演出に頼るのではなく、人間の心理に深く切り込み、疑心暗鬼がもたらす静かで陰鬱な恐怖を描くことに焦点を当てている。外部の脅威が強まるにつれて、内面の崩壊が加速するという構図を通して、極限状態における人間の本性を問いかける作品となっている。

キャスト

主要なキャストは以下の通り。

ポール：ジョエル・エドガートン
ウィル：クリストファー・アボット
サラ：カルメン・イジョゴ
トラヴィス：ケルヴィン・ハリソン・Jr
キム：ライリー・キーオ
アンドリュー：グリフィン・ロバート・フォークナー
バッド：デヴィッド・ペンドルトン

製作

本作の製作は、気鋭の映画会社A24の出資のもと進められた。2015年5月には、A24がトレイ・エドワード・シュルツ監督の次回作を含む2本のプロジェクトに出資することが発表されている。キャストについては、2016年6月にジョエル・エドガートンの出演が報じられ、同年8月にはクリストファー・アボット、カルメン・イジョゴ、ライリー・キーオといった俳優陣の参加が決定した。主要撮影は、キャスト決定と同月の2016年8月より、ニューヨーク州にて開始された。

公開

本作は、2017年4月29日にオーヴァールック映画祭で初めて上映され、プレミアを飾った。その後、アメリカ合衆国での劇場公開に向けた準備が進められた。当初、配給を担当するA24は全米公開日を2017年8月25日に設定していたが、後に公開時期が前倒しされ、2017年6月9日に封切られることとなった。

興行収入

2017年6月9日、本作は全米2533館で公開された。公開初週末には、事前の興行収入予測（約700万ドル）を下回る結果となり、約598万ドルを記録し、週末興行収入ランキングで初登場6位となった。映画情報サイトDeadline.comは、観客からの評価が二分され、特にCinemaScoreでの評価が低かったことが、興行成績に影響を与えたと分析している。

評価

本作は、批評家の間では概ね高い評価を獲得した。映画レビュー集積サイトRotten Tomatoesには217件のレビューが寄せられ、批評家支持率は88%に達し、平均点は10点満点で7.4点となっている。同サイトの批評家の総意として、「『イット・カムズ・アット・ナイト』は必要最小限の要素を巧みに利用し、画面に直接映らないものが、映るものと同じくらい、あるいはそれ以上に恐ろしいということを証明している」と、心理的な恐怖演出が高く評価されている。また、別の集積サイトMetacriticでは、43件のレビューに基づく加重平均値が100点満点中78点となり、「概ね好意的なレビュー」に分類されている。しかし、観客の評価は批評家と対照的で、市場調査会社CinemaScoreによる評価は最低ランクに近い「D」であった。この評価の乖離は、本作の実験的なアプローチや、観客が期待する一般的なホラー映画とは異なる静かで内省的な作風が影響していると考えられる。

出典

公式サイト
英語版公式サイト
日本語版公式サイト
* It Comes at Night - IMDb（英語）

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