イトコルトルミット

イトコルトルミット（Ittoqqortoormiit）は、グリーンランド東部、セルメルソーク基礎自治体に属する集落です。かつてはスコルズビスーン（Scoresbysund）と呼ばれていました。現在の名称は東グリーンランド語で「大きな家に住む人々」を意味します。人口は363人（2024年時点）と小規模ながらも、独自の文化と歴史を持つ地域です。

地理

イトコルトルミットは、グリーンランド海のスコルズビスーンフィヨルド北岸、リバプールランド半島の南東端に位置しています。この場所は、北極圏の厳しい自然環境の中にあり、ホッキョクグマ、ジャコウウシ、鰭脚類などの野生動物が生息しています。

歴史

この集落は1925年、アイナー・ミケルセンと80人のイヌイット入植者によって開かれました。彼らは、タシーラクなどからの移住者で、当時の宗主国デンマークの北東グリーンランドへの関心の高まりも背景にありました。入植の動機には、タシーラクの生活条件の改善という側面もありました。この地域は、鰭脚類、セイウチ、イッカク、ホッキョクグマ、ホッキョクギツネなどの動物が豊富に生息しており、入植後すぐに繁栄しました。

しかし、この地域には、入植以前からイヌイットの人々が生活していたことを示す廃墟や考古学遺物も存在しています。かつては、この地で多くの人々が生活していたことが伺えます。

交通

イトコルトルミットは、グリーンランドの中でも地理的に孤立した町の1つです。ヘリポートとネレーリット・インアー空港を結ぶエア・グリーンランドが、主な交通手段となっています。空港へは、年間を通してボートでのアクセスが可能な時期もあります。また、レイキャヴィークへの便も週2便運航しており、他の地域へは、クルスク経由での迂回便が利用可能です。

経済

イトコルトルミットの経済は、地元のハンターによるクジラとホッキョクグマ狩猟が中心です。狩猟は、現在もこの地域における重要な文化であり、経済活動の基盤となっています。獲られた肉や副産物は、ハンターの生活を支え、経済的な収入にもなっています。しかし、その収入は季節変動が大きく不安定な面もあります。

沿岸部にはエビやカラスガレイなどの豊富な水産資源がありますが、海氷が漁業を阻害するため、漁業はあまり盛んではありません。近年は観光業の重要性が高まっており、Uunarteqでは、廃屋を利用したコテージが地元住民によって運営され、夏季には観光客を受け入れています。

国際関係

イトコルトルミットは、デンマークのオールボーと姉妹都市提携を結んでいます。

気候

イトコルトルミットは、ツンドラ気候（ケッペンの気候区分：ET）に属しています。冬は厳しく寒く、夏は冷涼です。月平均気温は樹木が成長できる10℃というしきい値とほぼ同じで、年間平均気温は−5.0℃です。このことから、イトコルトルミットは、地球上で人が恒久的に暮らす場所の中でも、最も寒い場所の1つと言えます。

過去には、フェーン現象の影響で気温が一時的に15.9℃まで上昇したこともありましたが、基本的に寒冷な気候です。

人口

イトコルトルミットの人口は、過去20年間に変動を繰り返しており、2006年時点から約35％減少しています。

イトコルトルミットは、厳しい自然環境の中で、伝統的な生活様式を維持しながら、現代的な生活も営んでいるユニークな集落です。その歴史と文化は、グリーンランドの多様な一面を表すものです。

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