ツンドラ気候

ツンドラ気候とは

ツンドラ気候は、ケッペンの気候区分における寒帯に属する気候区の一つです。記号はETで、Eは寒帯、Tはツンドラを意味します。ツンドラとは、本来「木がない土地」を指し、森林が生育するには寒すぎる気候を特徴とします。

定義

ツンドラ気候の最も重要な定義は、最暖月平均気温が0℃以上10℃未満であることです。最寒月平均気温や降水量に関する条件はありません。そのため、必ずしも「冬に非常に寒くなる地域」を指すわけではなく、年間を通じて気温が低い地域を意味します。赤道付近の高山や、海洋性気候の影響で年較差が小さい地域でも、この条件を満たす場所が存在します。

特徴

主に北半球の大陸北部やグリーンランド周辺に分布し、一年を通して氷雪に覆われていることが多いです。しかし、短い夏の間には永久凍土が解け、ツンドラと呼ばれる蘚苔類や地衣類などの植物が生育します。イヌイットやサーミ人などの少数民族が生活しており、トナカイの遊牧が盛んです。

分布

ツンドラ気候は、以下の地域に分布しています。

北アメリカ大陸、ユーラシア大陸の北極海沿岸
グリーンランド南部
アイスランド北部
チリ最南部（フエゴ島）
インド洋南部のケルゲレン諸島
南極半島
チベット高原、アンデス山脈、富士山頂などの高山地帯

日本の気象庁観測点では、富士山頂のみがツンドラ気候に該当します。

都市

ツンドラ気候の地域は、基本的に人口が少なく、大都市は発達していません。主な都市としては、以下が挙げられます。

ヌーク（グリーンランド）
アナディリ（ロシア）
ウトキアグヴィク（アメリカ合衆国アラスカ州）
ディクソン（ロシア）
イカルイト（カナダ）
エル・アルト（ボリビア）：アンデス山脈の低緯度地帯に位置し、典型的なツンドラ気候とは異なる特徴を持つ
ウシュアイア（アルゼンチン）：フエゴ島に位置し、海洋性気候の影響で気温が比較的温暖

これらの都市は、人口数千人から数万人規模であることが一般的です。例外的にアンデス山脈の低緯度地帯では都市が発達している例もあります。

気候特性

ツンドラ気候は、極高圧帯の影響で降水量が少ないですが、春と秋には若干の降水があります。冬の間は、より寒冷な氷雪気候（EF）よりも寒くなる地域もあります。また、アイスランド北部やアンデス山脈、フエゴ島のように最寒月平均気温が-3℃を下回らないものの、最暖月平均気温が10℃に達しない地域もツンドラ気候に分類されます。極地では、白夜と極夜がみられます。

生態系

短い夏の間に、永久凍土の表面が解けて、地衣類や蘚苔類が生育するツンドラが広がります。氷雪気候に比べて生態系は多様で、キツネやクマなどの哺乳類、鳥類、昆虫など、寒冷な環境に適応した生物が生息しています。

気候変動の影響

地球温暖化の影響で、ツンドラ気候の分布域は高緯度や標高の高い場所へ移動すると予想されています。また、最暖月平均気温が10.0℃を超えると、温帯や亜寒帯に変わる可能性があります。長期的な視点では、植生の変化や生態系への影響が懸念されています。

土壌

地中には永久凍土が存在し、その上に強酸性のツンドラ土が形成されています。

産業

農業には適しておらず、トナカイの遊牧、狩猟、海洋漁業、鉱業などが主な産業です。ラブラドール・レトリバー、シベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュート、サモエドなどの犬種は、ツンドラ気候地域で暮らす人々に飼われていたことがルーツです。

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