イヌエンジュ

イヌエンジュ（犬槐）とは

イヌエンジュ（学名: Maackia amurensis）は、マメ科イヌエンジュ属の落葉高木です。エンジュに似ているものの、より格下であるという意味合いで「イヌ」の名が付けられました。中国では「朝鮮槐」と呼ばれ、やはりエンジュとは区別されています。

名称について

和名の由来は、先に述べたようにエンジュに似ているものの、それよりも劣るという意味合いが含まれています。しかし、「エンジュ」の語源とされる古称「エニス」は、在来種であるイヌエンジュを指していたという説もあります。

学名の amurensis は、本種が発見されたアムール川流域に由来します。

別名としては、カライヌエンジュ、トウイヌエンジュ、ハネミノイヌエンジュ、ケハネミイヌエンジュなどがあります。

特徴

分布

アムール川流域、ロシア、中国北東部、朝鮮半島、そして日本では北海道から本州の中部地方以北に分布し、山地や川原などに自生します。

形態

落葉広葉樹であり、幹はまっすぐには伸びず、全体的にゆらりと曲がったような形になります。樹皮は菱形に裂け、次第に長く裂けてきます。若木の樹皮は緑色を帯びた褐色で、成木になるにつれて皮目の部分から縦に浅く裂けてきます。一年枝は暗灰褐色で、毛があるものと無いものがあります。

芽吹きの頃の葉は銀白色でよく目立ち、長さ20 - 30センチメートルの奇数羽状複葉で、左右対称に3 - 6対の小葉がつきます。小葉は長さ4 - 7センチメートルの卵形で全縁、裏面は褐色の軟毛が密生しています。

花と冬芽

花期は7 - 8月ごろで、黄白色の総状花序の花を咲かせます。公園などに植栽されることも多く、伐った生木には独特の臭気があります。

冬芽は丸みのある三角形で栗褐色をしており、有毛で3 - 5枚の芽鱗に包まれています。外側の芽鱗1枚が小さいのが特徴です。枝先に仮頂芽をつけ、側芽は枝に互生します。葉痕は半円形や三日月形で、維管束痕は3個つきます。

エンジュとの違い

エンジュとの大きな違いは成木の樹皮にあります。エンジュは縦に細かく裂けるのに対し、イヌエンジュは菱形や波型に粗く裂けます。

利用

庭木などの植栽樹として用いられます。日当たりを好む性質から、南から西向きの庭に適しており、植栽適期は12 - 3月中旬です。

アイヌはイヌエンジュを「チクペニ」と呼び、墓標に用いました。「エンジュ」の名で流通している材木は、実際にはイヌエンジュであることが多いです。赤みの濃い芯材と淡色の縁材の組み合わせが特徴で、美観、強度、耐久性に優れています。流通量が限られているため、床柱などの装飾材として珍重されるほか、フローリング、家具、工芸品などにも用いられます。

イヌエンジュは、その独特な風貌と多様な用途で、人々の生活に深く関わってきた樹木と言えるでしょう。

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