イヌノハナヒゲ

イヌノハナヒゲ (Rhynchospora chinensis Nees et Meyen)

イヌノハナヒゲは、単子葉植物に分類されるカヤツリグサ科の多年草です。湿地のような場所に生育し、細長く伸びる姿が特徴的です。

特徴

地下茎はわずかに地を這うように伸び、そこから花茎が地上に現れます。根元から生える葉は線形で、やや直立する傾向があります。花期は夏以降で、花茎は細く、高さ30cmから100cm程度まで成長します。花序は花茎の先端に散房状に形成され、それぞれの枝先に数個の小穂が頭状に集まってつきます。

小穂は先端が尖った卵形で、褐色をした鱗片に覆われています。長さは7mmから9mmで、内部には1つの小花が含まれます。花は雄しべと雌しべ、そして数本の針状の付属物から構成されています。果実は倒卵形をしており、その先端から伸びる花柱は、果実との接続部分が幅広く、厚みを帯びているのが特徴です。この特徴は、ハリイ属の植物と共通しています。

分布

イヌノハナヒゲは、日本国内では本州、四国、九州に分布しており、国外では朝鮮半島、中国、インド、インドネシアなど、アジアの広い地域に分布しています。日当たりの良い湿地を好み、水の滲み出る岩の上などにも見られます。

近縁種

日本には、イヌノハナヒゲと同属の植物が数種類存在します。これらの多くは外見が似ており、区別が難しいとされています。特にイヌノハナヒゲとよく似ている種としては、以下のものがあります。

オオイヌノハナヒゲ (R. fauriei Franch.)
コイヌノハナヒゲ (R. fujiana Makino)
イトイヌノハナヒゲ (R. faberi C.B.Clarke)
ミヤマイヌノハナヒゲ (R. yasudana Makino)

これらの種は外観に多少の差はあるものの、生育状況による個体差も大きいため、正確に区別するには、鱗片を剥がして刺状毛の状態などを詳細に観察する必要があります。

比較的区別がつきやすい種としては、以下のものがあげられます。

トラノハナヒゲ (R. brownii Roem. et Schult.)：やや大型の植物で、根出葉がよく発達します。花茎は時に100cmに達し、先端が枝分かれしてまばらに小穂をつけます。

参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物　草本I 単子葉植物』(1982年、平凡社)
* 谷城勝弘『カヤツリグサ科入門図鑑』（2007年、全国農村教育協会）

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