イベリア戦争

イベリア戦争：東ローマとサーサーン朝の激突

イベリア戦争は、6世紀の526年から532年にかけて、現在のジョージア東部に位置するイベリア王国を巡り、東ローマ帝国とサーサーン朝の間で繰り広げられた戦争です。この戦争は、両帝国の勢力争い、宗教的な対立、そして戦略的な要衝の確保といった、複雑な要因が絡み合って勃発しました。

戦争の背景

イベリア戦争以前には、アナスタシア戦争が両帝国の間で戦われ、その後7年間の休戦協定が結ばれていました。東ローマ帝国は、将来の紛争に備えてダラの要塞化を進め、サーサーン朝の脅威に対抗しようとしました。また、サーサーン朝の宗主権下にあったイベリア王国の王グルゲネスが東ローマ帝国へ亡命し、ラジカ王ツァス1世も東ローマ帝国へ寝返ったことで、両国間の緊張は高まりました。

東ローマ帝国の歴史家プロコピオスによれば、サーサーン朝の王カワード1世は、キリスト教徒のイベリア人をゾロアスター教徒へ強制的に改宗させようとしていたとされています。東ローマ帝国はイベリアを防衛するためにフン族の兵士を雇い、イベリア人を支援しました。

戦争の推移

525年、東ローマ艦隊がイエメンのヒムヤル王国を征服するためにアクスム王国の軍隊を移送させ、サーサーン朝のアラブ人の同盟国であるラフム朝が東ローマ帝国の領土を襲撃するなど、紛争は様々な地域で拡大していきました。東ローマ帝国は、イエメンを影響下に置き、香辛料と絹の交易ルートにおける優位性を確立しようとしました。

526年か527年までに、南コーカサスとメソポタミア北部で本格的な戦闘が始まりました。サーサーン朝は、東ローマ帝国にフン族の侵入を防ぐための資金を支払わせようと攻勢をかけました。東ローマ帝国は、コーカサスの防衛のためにサーサーン朝に補助金を支払っていましたが、資金不足に悩まされていました。

戦争の初期はサーサーン朝が優勢に進めましたが、東ローマ帝国はダラとサタラの戦いで勝利し、戦況を挽回しました。特に、ベリサリウス将軍はダラの戦いで、自軍よりもはるかに大軍のペルシア軍を破るという功績を挙げました。しかし、その後のカリニクムの戦いでは敗北し、解任されることとなりました。

休戦とその後

531年にカワード1世が死去し、ホスロー1世が新たなサーサーン朝の王として即位しました。両帝国は和平交渉を開始し、532年9月に永久平和条約を締結しました。東ローマ帝国はサーサーン朝に対し多額の金を支払い、両国は占領地を返還することで合意しました。イベリアはサーサーン朝の支配下に留まりましたが、国を離れていたイベリア人は、東ローマ帝国の領土に留まるか、イベリアへ戻ることを認められました。

イベリア戦争は、東ローマ帝国とサーサーン朝という二つの大国の間で繰り広げられた重要な戦争であり、その後の両帝国の関係や、地域の勢力図に大きな影響を与えました。この戦争は、両帝国の軍事力、戦略、外交、そして文化的な側面を理解する上で、貴重な事例と言えるでしょう。

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