イボテングタケ

イボテングタケ（Amanita ibotengutake）

イボテングタケは、ハラタケ目に属する大型の毒キノコで、主に北半球の温帯地域、特に針葉樹林に生育しています。このキノコは、テングタケに似た特徴を持ち、外表面に立体的なイボが目立つことから、その名が与えられました。

特徴

イボテングタケは、傘の直径が4〜20センチメートルほどで、傘の色は灰褐色からオリーブ褐色を呈します。また、傘の縁には控えめな条線があり、その表面には薄茶色のイボ状のツボの破片が散見されます。ヒダは白色で、密に配列され、柄に離生しています。柄の色は白色またはクリーム色で、小さな鱗片があり、触れるとざらざらした感触があります。下方にかけてやや太くなり、根本はリング状の名残を持つ球根状の形をしています。上部にはツバがついていて、これが容易に外れます。肉質は白色で脆く、香りや味はほとんどといってよいほどありません。

このキノコは、テングタケと混同されることが長い間ありましたが、2002年に新たに独立した種として認識されました。イボテングタケは、テングタケよりも大型であり、柄の基部がリング状にめくれる特徴や傘のイボが褐色がかる傾向がありますが、見た目で識別することは難しい場合があります。顕微鏡で観察すると、担子器の細胞の構造に違いがあり、これを利用して種の判別が可能となります。

生息地

イボテングタケは主に夏から秋にかけて、トウヒやトドマツといったマツ科の針葉樹林に多く発生します。また、宮城県仙台市近郊では、過去にハエトリモダシという名前で知られていたこともあります。松本彦七郎によりイボテングタケと名付けられ、1962年にはこの種から殺ハエ成分が発見され、イボテン酸と名付けられました。遺伝子解析により、2002年に正式な独立種として認識された経緯があります。

毒性

イボテングタケにはイボテン酸やムッシモール、スチゾロビン酸などの有毒成分が含まれています。特にイボテン酸はこのキノコから初めて抽出された重要な毒性成分です。日本ではこのキノコの有毒性が利用され、ハエの捕殺に使われることがありました。

摂取すると、食後30分程度で胃腸系（腹痛、嘔吐、下痢など）や神経系（心拍数の増加、幻覚、けいれん、発汗など）のさまざまな中毒症状が現れる可能性があります。重症になると呼吸困難や昏睡状態に陥ることもあり、非常に危険です。食用としては適さないので、誤って摂取しないよう注意が必要です。

関連項目

テングタケやガンタケなど、類似の毒キノコや食用きのこもあるため、正しい知識のもとでの識別が求められます。特にテングタケダマシはイボテングタケよりも小型であり、異なる生息環境が特徴です。これらの情報を基に、キノコ採集や食用キノコの判断を行うことが重要です。

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