イミディエイト・レコード

イミディエイト・レコードは、ローリング・ストーンズのマネージメントに携わったアンドリュー・ルーグ・オールダムとトニー・カルダーによって1965年に設立されたイギリスのレコードレーベルです。ロンドンを拠点に、ブルースやリズムアンドブルースを愛する音楽ファンの間で注目を集めました。

設立当初から、イミディエイト・レコードは数々の才能あるミュージシャンと契約し、英国音楽シーンに大きな影響を与えました。ロッド・スチュワート、P.P.アーノルド、ソングライターのポール・コルダ、ビリー・ニコルス、ジョン・メイオール、サヴォイ・ブラウン、スモール・フェイセス、ザ・ナイス、フリートウッド・マック、グラウンドホッグス、クリス・ファーロウ、ダンカン・ブラウン、そしてハンブル・パイなど、後に音楽史に名を刻むアーティストたちがイミディエイト・レコードから作品を発表しています。彼らが生み出した音楽は、時代を超えて人々を魅了し続けています。

しかし、イミディエイト・レコードの歴史は成功だけではありませんでした。1970年には財政問題により活動を停止。その背景には、アーティストへのロイヤリティ未払いといった問題が大きく関わっていました。特に、スモール・フェイセスに対する未払いロイヤリティは、長年にわたる論争の的となっています。スモール・フェイセスは数々のヒット曲を世に送り出し成功を収めたにもかかわらず、自身のレコードから十分な収入を得ることができませんでした。この問題は最終的に訴訟へと発展し、解決に至ったのは2000年代初頭のことです。

スモール・フェイセスのドラマー、ケニー・ジョーンズによると、イミディエイト・レコードの資産と収入の多くは、同社の上級パートナーによって不正に流用され、オフショア口座に送金されたとされています。また、P.P.アーノルドのために楽曲を提供したポール・コルダも、イミディエイト・レコードでの仕事に対する報酬を受け取ることがなかったと証言しています。これらの出来事は、レーベル運営における不透明性と不誠実さを示すものであり、レーベルの歴史に暗い影を落としています。

アメリカ市場においても、イミディエイト・レコードはMGMレコードやユナイテッド・アーティスツといった大手レーベルと契約を結び、作品をリリースしました。その後、CBSレコードと契約し、独自のレーベルシリーズを展開しようと試みましたが、最終的には短命に終わります。アメリカでは独立レーベルとして活動を再開し、ハンブル・パイのデビューアルバムなどをリリースしましたが、それも長くは続きませんでした。

イミディエイト・レコードの歴史と問題点は、2008年に出版されたサイモン・スペンスによる包括的な書籍によって詳しく語られました。この書籍は、アンドリュー・ルーグ・オールダムの自伝のゴーストライターを務めたスペンスが執筆しており、イミディエイト・レコードの内情を詳細に記述しています。さらに、2016年にはマーク・ジョーンズによる詳細なディスコグラフィ『The Immediate Discography: The First 20 Years』が出版され、レーベルの音楽的遺産を改めて世に示しました。このディスコグラフィは、録音音楽史家の高い評価を受け、賞を受賞するなど高い評価を受けています。

現在、イミディエイト・レコードのカタログは、BMGライツ・マネージメント傘下のサンクチュアリ・レコード（イギリス）とチャーリー・レコード（イギリス国外）によって管理されています。チャーリー・レコードはイミディエイト・レコードの商標も所有しています。イミディエイト・レコードは、その短くも波乱に満ちた歴史の中で、多くの才能あるミュージシャンを世に送り出し、音楽史に足跡を残しました。しかし、その裏には解決されないまま残された問題や、アーティストへの不当な扱いといった暗い歴史も存在します。イミディエイト・レコードは、成功と失敗、そしてその両面を物語る象徴的なレコードレーベルと言えるでしょう。

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