スモール・フェイセス

スモール・フェイセス：ブリティッシュロックの伝説

スモール・フェイセスは、1960年代のイギリスを代表するロックバンドの一つです。ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フーと並ぶ存在として、その名を歴史に刻んでいます。2012年には栄えあるロックの殿堂入りを果たし、その音楽的影響力は今もなお色あせていません。

結成と初期の活動

バンドは1965年、スティーヴ・マリオット（ギター、ボーカル）、ロニー・レーン（ベース、ボーカル）、ケニー・ジョーンズ（ドラムス）、ジミー・ウィンストン（キーボード）の4人によってロンドンで結成されました。マリオットは子役俳優としてキャリアをスタートさせ、『オリバー！』などに出演経験を持ち、音楽活動も並行して行っていました。レーンとの出会いをきっかけにバンドが誕生。メンバーの体格が小柄だったことと、シーンを牽引する存在という意味を込めて「スモール・フェイセス」と名付けられました。

当初はデッカ・レコードからデビュー。初期のシングルはチャートのトップには届きませんでしたが、ウィンストンの脱退後、イアン・マクレガンがキーボードに加入。1966年、シングル「シャ・ラ・ラ・ラ・リー」がイギリスでヒットを記録し、バンドは飛躍的に知名度を上げます。続くファーストアルバム『スモール・フェイセス』は全英アルバムチャートで3位を記録、シングル「オール・オア・ナッシング」は1位を獲得するなど、彼らの才能が開花する時期となりました。しかし、レコード会社との契約上の問題から、バンドは移籍を決断します。

イミディエイト・レコード時代と絶頂期

1967年、スモール・フェイセスはアンドリュー・ルーグ・オールダム率いるイミディエイト・レコードに移籍します。移籍後発表されたアルバム『スモール・フェイセス』は全曲オリジナル楽曲で構成され、バンドとしての成長を鮮やかに示しました。同時期、旧所属レーベルから編集盤がリリースされるという状況の中、彼らは「イチクー・パーク」、「ティン・ソルジャー」などのヒット曲を連発、アメリカ進出も果たしました。

1968年には、後の伝説的名盤となるコンセプトアルバム『オグデンズ・ナット・ゴーン・フレイク』を発表。全英アルバムチャートで6週間連続1位を獲得し、バンドの絶頂期を築きました。しかし、この成功の裏でバンド内部の軋轢も深まっていきました。

メンバー間の衝突とバンドの分裂

マリオットは、新たな音楽的展開を模索する中で、元ザ・ハードのピーター・フランプトンをメンバーに迎え入れようとしていましたが、レーンとマクレガンは強く反対しました。バンド内部の意見の食い違いは深刻化し、1968年の大晦日のコンサートを最後にマリオットは脱退。翌年にはフランプトンと共にハンブル・パイを結成します。

残されたレーン、マクレガン、ジョーンズは、ロッド・スチュワートとロン・ウッドを迎え入れ「クワイエット・メロン」として再出発、後に「フェイセズ」と改名し新たな成功を収めますが、1975年に解散しました。

再結成とメンバーの死

1976年、「イチクー・パーク」のリバイバルヒットをきっかけに、スモール・フェイセスは一時的に再結成されましたが、レーンは参加しませんでした。その後、レーンは多発性硬化症を患い、1997年に他界します。1991年にはマリオットが火災事故で44歳の若さで亡くなるという悲劇に見舞われました。マクレガンも2014年に他界。バンドの黄金期を支えたメンバーたちが次々と亡くなっていきました。

音楽的影響とレガシー

スモール・フェイセスは、デビュー当時からモッズシーンで絶大な人気を誇り、ザ・フーと共にそのムーブメントを牽引しました。彼らの音楽は、後のアーティストたちにも多大な影響を与え、現在でも多くのミュージシャンからリスペクトされています。ポール・ウェラーを始め、多くのアーティストが彼らの楽曲をカバーしたり、トリビュートコンサートを開催するなど、彼らの音楽は今もなお愛され続けています。スモール・フェイセスの音楽は、60年代のブリティッシュロックの歴史に深く刻まれた、永遠の遺産として輝き続けています。

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