イラク正式政府

イラク正式政府とは

イラク正式政府は、2006年5月20日に発足した、民主的な議会選挙によって成立した最初の政府です。これは、アメリカ合衆国が主導したイラク民主化プロセスの最終段階に位置づけられます。

移行政府によって作成された憲法に基づき実施された議会選挙の結果、選出された議員たちが閣僚として参加しました。しかし、2006年の議会選挙でシーア派が多数の議席を獲得したことに対し、スンニ派が反発。国内情勢は内戦とも言える状況にまで悪化しました。

このような状況の中、2006年4月22日、シーア派議員連合であるイラク統一同盟が、ヌーリー・マーリキー（別名：ジャワド・マリキ）を首相に選出。この選出はクルド人を含む議会によって承認され、正式政府の発足に至りました。

閣僚構成

閣僚ポストは37で、その中には4名の女性も含まれていました。閣僚の選出にあたっては、議会の当選人数に応じて、各民族・宗派から選出することで合意。具体的には、シーア派15名、クルド人7名、スンニ派6名、キリスト教を含む世俗派5名、トルクメン人1名という構成になり、これは当時の人口比率をほぼ反映したものとなりました。

しかし、内務相、国防相、国家治安相といった、国内の治安に直接関わる重要なポストについては、宗派間の意見の隔たりが大きく、最終的に首相と副首相が兼任することで決着しました。このように暫定的な措置を講じながらも、2006年5月20日、マーリキー首相は閣僚名簿を議会で発表し、承認を得ました。その後、6月8日には治安担当の3閣僚が決定し、正式に任命されています。

主要閣僚

当時の主な閣僚は以下の通りです。

国民議会議長：マフムード・アル＝マシュハダーニー（スンナ派）
大統領：ジャラル・タラバニ（クルド人、続投）
副大統領：アーディル・アブドゥルマフディー（シーア派）、ターリク・アル＝ハーシミー（スンニ派）
首相：ヌーリー・マーリキー（シーア派）
副首相：バルハム・サリフ（クルド人）、サーラム・アッ＝ザウバイー（スンニ派）
外務相：フーシュヤール・ズィバーリ（クルド人）
内務相：ジャワード・ブーラーニー（シーア派）
国防相：アブドゥルカーディル・ウバイディー（スンニ派）
国務相（国家安全保障担当）：シルワーン・ワーイリー（シーア派）
財政相：バーヤーン・バーキル・ジャブル・アッ＝ズバイディー（シーア派）
石油相：フセイン・アッ＝シャフリスターニー（シーア派）
科学技術相：ラーイド・ジャーヒド・ファフミー（イラク共産党）



イラク正式政府の発足は、イラクの民主化に向けた大きな一歩となりましたが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。宗派間の対立、治安の悪化、政治的な駆け引きなど、多くの課題を抱えながらの船出となりました。

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