ヌーリー・マーリキー

ヌーリー・カーミル・ムハンマド・アル＝マーリキー

ヌーリー・カーミル・ムハンマド・アル＝マーリキー（1950年6月20日生まれ）は、イラクの政治家であり、2006年から2014年までイラクの首相を務めた。彼はまた、内務大臣や国防大臣も暫定的に兼任した。イスラーム・ダアワ党の書記長として、政治連合「法治国家連合」を率いており、シーア派の信者である。日本では一般に「マリキ首相」として知られている。

幼少期と教育

マーリキーはイラク中部のカルバラー県ヒンディーヤで生まれ、バグダード大学でアラビア文学を学び、その後サラーフッディーン大学で修士号を取得した。彼はサッダーム・フセイン政権下でシーア派として弾圧を受け、1980年にシリアに亡命することを余儀なくされた。この間、彼は「ジャワード・マーリキー」という偽名で活動した。

政治キャリアの開始

2003年、サッダーム政権が崩壊した後、マーリキーはイラクに帰国した。彼は新たに制定された憲法の草案作りに関与し、イラク移行政府の一員としてジャアファリー首相の側近となった。正式に首相に就任する前、マーリキーはシーア派の利益を代表する立場におり、特に長引く宗派的対立の中で重要な役割を果たした。2006年4月、ダアワ党の副代表として首相に指名され、同年5月に正式に首相に就任した。

治安と政治手法

マーリキーの首相就任当初、イラクは深刻な治安の危機に直面していた。彼は厳格な治安政策を採用し、特に旧フセイン政権の関係者に対しては断固たる姿勢を維持した。2006年12月30日には、サッダーム・フセインの死刑を執行化し、これにより政敵から「スターリン」と呼ばれることもあった。その一方で、彼は2007年から米軍と連携しながらテロリスト掃討作戦を開始し、治安の回復に努めた。

外交と国際関係

マーリキーは日本との関係を重視し、2007年には明仁天皇との会見を行い、イラクの再建に向けた協力を求めた。彼の政権はまた、反米主義に対する抵抗を強いられることが多かった。特に、ブッシュ大統領との会見では靴投げ事件が発生し、その影響が大きかった。

再選と政権崩壊

2009年の地方選挙では圧勝を収めるが、その後もスンナ派の排除が政権の不安定要因となった。2010年の議会選挙でも法治国家連合は再び多数を獲得したが、スンナ派有権者の参加が少なかったことから、政府の樹立は難航した。このような状況が続く中、マーリキーはスンナ派の不満を引き起こし、ISILなどの過激派組織の台頭を促す要因となる。

2014年、ISILがイラクにおいて攻撃を開始する中、市民や国内の政治勢力からの支持が低下したマーリキーは、フアード・マアスーム大統領の提案により、その地位を失うこととなる。彼は再び首相を目指す意向を持ち続けたが、最終的にはハイダル・アル＝アバーディが後任として選出されることとなった。マーリキーもその後、副大統領として名誉職に就くことが決まったが、実際の政治的権力は次第に彼から離れていくことになる。

政治的影響

マーリキーの政策は、イラクの政情に対し大きな影響を与え、その後の政治的混乱の一因ともなった。彼の首相時代における宗派間の緊張やISILの台頭は、現在のイラクの状況に深く根ざしている。彼の任期終了後もイラクの政治は依然として複雑で、多くの課題を抱え続けている。

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