イラク統治評議会

イラク統治評議会：激動の時代を担った暫定統治機関

イラク統治評議会（アラビア語：مَجْلِس الحُكْمِ العِرَاقِيّ）は、2003年のイラク戦争終結後、アメリカ軍を中心とする連合国による占領下で、イラク人自身の手によって設立された初の暫定統治機関です。この評議会は、新政府が樹立されるまでの間、イラクの政治的空白を埋め、国家再建に向けた重要な役割を担いました。

設立の背景と位置づけ

2003年3月のイラク戦争勃発により、長年続いたサッダーム・フセイン政権が崩壊しました。その結果、イラクは深刻な政治的混乱に陥り、連合国暫定当局（CPA）が暫定的な統治を行うこととなりました。イラク統治評議会は、CPAの下部組織として、その指示・指導に基づき、立法と行政を担当しました。形式的には立法権・行政権を有するとされましたが、実質的には、連合軍（主にアメリカ軍）による間接統治の一形態とみなされています。

多様なメンバー構成

評議会のメンバーは、旧フセイン政権に反対していた様々な民族・宗派の代表者25名で構成されました。内訳としては、イスラム教シーア派のアラブ人が13名と過半数を占めていましたが、少数派であるスンナ派アラブ人5名、クルド人5名、トルクメン人1名、キリスト教徒のアッシリア人1名も含まれており、イラクの多様性を反映した構成となっていました。

主な活動と出来事

イラク統治評議会は、短い活動期間の中で、以下のような重要な出来事を経験しました。

2003年3月19日: 対米戦争勃発、翌日には地上軍が侵攻。
2003年4月9日: サッダーム・フセイン政権崩壊。
2003年5月: 連合国暫定当局（CPA）発足。
2003年7月13日: 統治評議会の最初の会合が開催され、フセイン政権崩壊日である4月9日が国民の祝日と決定。
2003年7月30日: 初代議長にダアワ党のイブラーヒーム・アル＝ジャアファリー代表が選出されました（議長は評議員9名による1ヶ月ごとの輪番制）。
2003年9月1日: 暫定内閣が樹立。
2003年9月20日: アキーラ・ハーシミー評議員が銃撃を受け重傷を負い、同月25日に死亡。
2003年12月10日: 旧フセイン政権の戦争犯罪を裁くためイラク特別法廷が設置。
2003年12月13日: 潜伏中のサッダーム・フセイン元大統領がアメリカ軍によって拘束。
2004年5月17日: イラク統治評議会のアブドゥッザフラ・オスマーン・ムハンマド議長が自爆テロにより暗殺。
2004年5月28日: 暫定政権（大統領ガーズィー・ヤーワル）を選出。
2004年6月2日: 暫定政権が発足し、イラク統治評議会は解散。

評価と課題

イラク統治評議会は、占領下の不安定な状況の中で、イラクの政治的安定化と国家再建に向けた第一歩を踏み出したという点で、重要な役割を果たしました。しかし、評議会自体が連合国による占領体制下で発足したため、その正当性や独立性には常に疑問の声が上がっていました。また、評議会内での民族・宗派間の対立や、テロによる混乱も続き、その活動は困難を極めました。評議会の解散後、イラクは新たな政府による統治へと移行しましたが、イラクの政治的安定化への道のりは、今なお課題を多く残しています。

関連情報

イラク
イラク戦争
イラク国民会議 (INC)

外部リンク

مجلس حكم العراق يعقد اجتماعه الأول اليوم…イラク統治評議会が最初の会合を本日開く（アルジャジーラ）

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