イラストリアス級航空母艦

イギリス海軍イラストリアス級航空母艦：強靭な装甲と進化の軌跡

第二次世界大戦において、イギリス海軍の航空母艦戦力の中核を担ったのがイラストリアス級航空母艦です。本級は、世界で初めて装甲を施された空母として知られ、その強靭な防御力は数々の戦闘で実証されました。しかし、この重装甲は搭載機数の制限という代償を伴い、その後の改良型では格納庫の増設や艦載機の運用能力向上に重点が置かれた設計変更が実施されました。

設計と建造

イラストリアス級は、前級であるアーク・ロイヤルを基本設計として、防御力の強化を図りつつ建造されました。第二次ロンドン海軍軍縮条約の制限排水量（2万3000トン）に収めるため、船体は比較的コンパクトに設計され、全長205.1メートル、全幅29.2メートルというサイズとなりました。飛行甲板の長さも、同時代の他の空母と比べて短く、搭載機数の制限に繋がりました。

初期の艦艇では格納庫は1段構造でしたが、改良型では格納庫を2段構造にすることで搭載機数の増加を実現しました。特に、4番艦のインドミタブルでは格納庫の一部を2段化し、5番艦と6番艦であるインプラカブル級では全段2段化することで、艦載機の運用能力を大幅に向上させました。

強靭な防御力

イラストリアス級の最大の特徴は、その強靭な防御力です。飛行甲板と格納庫を装甲で覆うことで、爆撃による損害を最小限に抑える設計が採用されました。格納庫を装甲ボックス化し、その天蓋を飛行甲板として利用するという独特の構造は、日本の空母とは異なるものでした。

装甲の厚さは、格納庫の上面と床面が76mm、側面が114mm、前後が64mmに達し、1000ポンド爆弾の直撃にも耐えることができました。格納庫天蓋以外の飛行甲板にも38mmの装甲が施され、艦体の主要部も厚い装甲で保護されました。この重装甲化により、本級は数々の戦闘で損傷を受けながらも生き延びることができました。

兵装と機関

主砲として45口径11.4cm連装両用砲Mk.IIIを8基搭載。副砲として2ポンドポンポン砲とエリコン20mm機銃を備え、対空防御能力も有していました。ただし、これらの兵装は戦時中に増強されました。機関は、初期の艦艇ではアーク・ロイヤルとほぼ同じ構成でしたが、改良型では出力の増強が行われ、航続距離の延伸も実現しました。

航空艤装と艦載機

重装甲化の影響もあり、イラストリアス級の艦載機運用能力は、同時代の他の空母と比べてやや制限されていました。初期型では搭載機数は約36機に留まりましたが、格納庫を2段構造にする改良によって、搭載機数は増加しました。しかし、アメリカ海軍のコルセア戦闘機のように、主翼を折りたたんだ状態でも高さが高すぎる機体は運用できず、アメリカ海軍との連携には課題を残しました。カタパルトは左舷側に1基のみ、着艦制動装置は艦尾部に6本が設置されました。

運用とその後

イラストリアス級は第二次世界大戦を通してイギリス海軍の主力として活躍し、数々の戦闘に参加しました。戦後はヴィクトリアスのみが近代化改装を受け、ジェット機の運用能力を得て1968年まで運用されましたが、他の艦艇は1950年代に退役しました。本級は、その強靭な防御力と改良を重ねた設計により、第二次世界大戦におけるイギリス海軍の戦力維持に大きな貢献を果たしたと言えるでしょう。

まとめ

イラストリアス級航空母艦は、世界初の装甲空母として、その強靭な防御力と幾度もの改良によって、第二次世界大戦で大きな役割を果たしました。搭載機数の制限という課題を抱えながらも、格納庫の増設などを通してその能力を向上させ、イギリス海軍の航空戦力として貢献した歴史を持つ艦級です。本稿では、その設計、兵装、防御、機関、航空艤装、搭載機、そして乗員数など、多角的な視点からイラストリアス級航空母艦の特徴を明らかにしました。これらの詳細な情報は、同時代の空母設計の進化を理解する上で貴重な資料となります。

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