イランにおける同性愛者迫害

イランにおける同性愛者迫害：法と現実の狭間

イランでは、イスラム法（シャリーア）に基づき同性愛行為が禁じられています。この法律が、同性愛者に対する迫害の根源となっています。しかし、すべてのイスラム教徒が同性愛を敵視するわけではなく、個人差が大きいことも事実です。

イランにおける同性愛者の状況に関して、日本における公的な扱いの最初の事例は、2004年の東京地裁判決です。この判決では、カナダ、オランダ、英国などの見解や判例を引用し、イランにおいて同性愛行為が必ずしも厳しく取り締まられているわけではないという点を指摘しています。公然と行われない限り、積極的な取り締まりの対象とはならず、同性愛行為のみで処刑された例は確認されていない、という見解です。社会的にみても、分別のある方法で関係を処理していれば、嫌がらせの危険性は低いとされています。

しかし、この判決では、原告の主張である「特定の社会的集団」としての同性愛者という認識は認められませんでした。裁判所は、同性愛を個人的なセクシュアリティと捉え、イランと日本の同性愛に対する考え方の違いを暗示しています。

また、原告にとって重要な点は、イラン政府による同性愛者の人権侵害への批判と、そのための政治的活動です。帰国した場合、政治的主張を理由に迫害を受ける可能性は否定できませんでした。裁判所は、国民の性表現に関する規制は、当該国の風俗、習慣、社会情勢に基づいた国民全体の価値観によって異なるものだと判断しました。つまり、自由な同性愛肯定運動は、イランにおいては規制や迫害を受ける可能性があるということです。

マスメディアの見解と現実

一方、欧米を中心としたマスメディアは、イランの人権状況を批判的に報じることが多く、同性愛問題についても否定的な見解を示しています。ただし、報道では、個人的な表現としての同性愛と、社会活動としての同性愛団体を明確に区別していないケースが見られます。

イランでは同性愛行為は犯罪であり、死刑を含む厳しい罰則が科せられる可能性があります。実際、処刑された例も報告されており、国際社会から強い非難を受けています。この法的根拠は、ムハンマドやアリーが同性愛者を処刑したというイスラム教の伝承に基づいています。

イラン国内では、多くの同性愛者が性的指向を隠して生活し、亡命を試みる者も少なくありません。亡命が拒否され、イランに送還された場合、死刑の危険性があります。そのため、日本や欧州諸国では、イランからの亡命者の扱いをめぐる議論がしばしば発生します。

かつてイラン大統領であったマフムード・アフマディーネジャードは、イランにおける同性愛者への迫害を批判された際、「イランには同性愛者は存在しない」と発言したことが知られています。この発言は、イラン政府の同性愛問題に対する姿勢を象徴的に示すものと言えるでしょう。

まとめ

イランにおける同性愛者の現状は、法的な禁止と現実の社会状況の間に大きな隔たりがあります。国際社会からの批判、難民問題、そして政府による発言など、複雑に絡み合った問題です。この状況は、宗教、文化、政治といった様々な要因が複雑に影響し合っていることを示しています。今後も、イランにおけるLGBTQ+の人々の権利と安全保障をめぐる状況は、国内外の関心の的であり続けるでしょう。

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