イリス (企業)

イリス（C. ILLIES & Co. Handelsgesellschaft mbH）

イリスは、ドイツのハンブルクに本社を構える専門商社で、1860年代から日本における輸入機械の取り扱いを行っています。この商社の始まりは、1859年にさかのぼります。当時、ルイス・クニフラーとそのパートナーであるギルデマイスターは、デュッセルドルフから日本へ渡り、長崎と横浜にクニフラー商会を設立しました。これがイリスの前身となっています。

成り立ちと歴史

クニフラー商会は、開国間もない横浜における外国商社の初の存在として知られ、当初は銃器や船舶、織物の輸入を行い、樟脳や絹、茶などを日本から輸出していました。しかし、商業活動は必ずしも順調ではなく、1860年には一時休業を余儀なくされます。この時、福沢諭吉が来訪し、商会から辞書を購入したことが彼の英語学習に寄与したという逸話もあります。

ギルデマイスターは1862年に横浜に移り、商会の再営業を開始。明治維新までに、横浜に限らず、箱館、神戸、大阪、新潟など日本各地に支店を開設し、主要取引先となりました。クニフラー商会は、日本での営業基盤を築く中で、地元の医師や学生ともつながり、特に司馬凌海（しば りょうかい）との関わりも有名です。

軍事と技術の関わり

1865年には、日本陸軍との関係が深まり、ツンナール銃や火砲の納入を果たしました。商会は次第に軍需品の供給を通じて、日本政府、特に軍との密接な関係を築いていきます。また、1871年には大北電信会社とともに国際通信インフラの整備にも寄与しました。

イリス商会への改名

1880年にはカール・イリスが経営権を引き継ぎ、商号をイリス商会に改めます。新政府の富国強兵政策に伴い、国内のインフラ整備や産業振興に向けた需給も拡大し、イリス商会はその一翼を担うことになりました。1898年には本社をハンブルクに移し、以後も神戸、大阪、築地などに拠点を広げました。

特に戦後の復興期、イリス商会は日本の近代化に重要な役割を果たし、水道や港湾建設、鉄道、軍事など多方面で実績を残しました。1920年にはドイツのボッシュ社と提携し、日本におけるボッシュ製品の普及に貢献します。

現在の状況

1941年に入ると太平洋戦争の影響で一時的に日本の支店を閉鎖したものの、戦後は迅速に復興し、現在の株式会社イリスとしてエンジニアリングおよび機械輸入の業務に集中しています。日本国内だけでなく、中国、韓国、台湾、ベトナム、インドネシアなど広範な経済活動を展開し、約300人の従業員を抱える企業へと成長しました。

2009年には創業150周年を迎え、横浜美術館で特別展示会を行うなど、長い歴史を誇る企業としての存在感を示しました。イリスは、在日外資系企業として最も古い企業の一つであり、他国からの投資においてもユニークな位置を占める商社です。

もう一度検索