イリッパの戦い

イリッパの戦い：第二次ポエニ戦争におけるヒスパニア戦線決戦

紀元前206年、イリッパ（現在のスペイン、セビリア近郊）で繰り広げられたイリッパの戦いは、第二次ポエニ戦争における重要な転換点となりました。この戦いで、大スキピオ率いるローマ軍は、カルタゴの将軍ジスコーネが指揮する大軍を破り、ヒスパニアにおけるカルタゴの勢力をほぼ一掃しました。

戦いの背景

バエクラの戦い（紀元前208年）とメタウルスの戦い（紀元前207年）での相次ぐ敗北により、ヒスパニアにおけるカルタゴの支配体制は大きく揺らいでいました。バルカ家を中心とするカルタゴ勢力は、事態を打開すべく、ジスコーネを総指揮官に任命し、総勢7万4千の兵力をイリッパに集結させ、ローマ軍との決戦に臨むことになりました。

一方、ローマ軍を率いる大スキピオは、カルタゴ・ノウァ（現在のカルタヘナ）を拠点とし、4万8千の兵を率いてイリッパの平原へ進軍しました。ローマ軍は、カルタゴ軍の補給路を断つため、カルタゴ軍陣地の南側に陣を構えました。

会戦の模様

両軍は数日間対峙し、日々布陣と撤退を繰り返しました。スキピオは、カルタゴ軍の油断を誘うため、あえて同様の行動を続けました。そしてある夜、スキピオは兵士に早朝の布陣を命じます。翌朝、ローマ軍が予想外の早朝に布陣を開始したため、ジスコーネは狼狽し、兵士に朝食も与えずに急遽布陣を指示しました。

両軍の配置

• - ローマ軍

- 両翼：重装歩兵と軽装歩兵を前に、騎兵を配置
- 中央：ヒスパニア人兵

• - カルタゴ軍

- 両翼：最左翼と最右翼に戦象を配置、スペイン人兵を前に、騎兵を配置
- 中央：カルタゴ兵

戦闘の展開

戦闘が開始されると、まずローマ軍の両翼がカルタゴ軍の戦象に攻撃を仕掛けました。この攻撃により、戦象は混乱し、自軍の騎兵を攻撃するという事態を引き起こしました。ローマ軍騎兵はこの隙を逃さず、カルタゴ軍の騎兵とスペイン人兵に猛攻を加え、大きな損害を与えました。中央では、ローマ軍のヒスパニア兵とカルタゴ軍兵士が互角に戦っていましたが、両翼を制圧されたカルタゴ軍は、兵士の空腹も重なり、次第に後退を始めました。ローマ軍は追撃を試みましたが、突如として発生した豪雨により、追撃を断念せざるを得ませんでした。敗れたマゴとジスコーネは、大西洋岸まで逃走し、その後カルタゴ本国へ帰還しました。

戦後

イリッパの戦いの後、スキピオは騎兵力の増強を図り、ヌミディアの王マシニッサと同盟を結びました。この戦いの勝利により、ヒスパニアからカルタゴ勢力はほぼ一掃され、スキピオはローマ本国へ召還されました。その後、スキピオはアフリカへと遠征し、ザマの戦いでハンニバルを破り、第二次ポエニ戦争を終結させることになります。イリッパの戦いは、スキピオのアフリカ遠征、ひいてはローマの勝利へと繋がる重要な一戦であったと言えるでしょう。

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