イリヤ・エレンブルグ

イリヤ・グリゴーリエヴィチ・エレンブルグの生涯と業績

イリヤ・グリゴーリエヴィチ・エレンブルグ（1891年1月26日 - 1967年8月31日）は、ソ連の著名な作家であり、文学の世界に多大な影響を与えました。彼はウクライナのキーウに生まれ、ユダヤ人の技師の家庭に育ちました。教育を受けたモスクワの第1中学に在籍していましたが、15歳の時にボリシェヴィキの地下運動に参加したため、学校から追放されてしまいます。エレンブルグは1909年にフランスに亡命し、そこで神秘主義や耽美主義の影響を受けることとなりました。

1917年のロシア革命が起こると、彼は帰国し、様々な場所を転々としながら演劇や文学に関わっていきます。しかし、1921年には芸術派遣員として国外に渡り、ソ連の出版物に作品を発表するようになります。大祖国戦争中には対独宣伝活動に従事し、赤軍に従軍した経験が回想録などで語られています。

エレンブルグの代表作には、1941年の長編『パリ陥落』や、1947年に発表された『嵐』などがあります。どちらもスターリン賞を受賞しており、特に『嵐』は対独協力者アンドレイ・ウラソフ将軍を題材にした作品です。また、彼は世界平和の促進にも力を入れ、スターリン平和賞を受賞しました。

エレンブルグは1967年に前立腺と膀胱の癌により他界し、モスクワのノヴォデヴィチ女子修道院の墓地に埋葬されています。彼の墓には友人であったパブロ・ピカソによる肖像画が刻まれています。

作風

彼の作風は、1920年代まではモダニズムの影響を受けた作品が多かったですが、1930年代にはソ連の国策である工業化を肯定的に描くようになりました。その後、スターリン批判の著作である『雪どけ』では、芸術家がスターリン体制下で直面した悲劇を描写し、パステルナークやソルジェニーツィンらと同じく批判の対象となりました。

エレンブルグの作品は、20世紀のロシア文化の歴史において重要な位置を占めており、彼の回想録は自己弁護と政策の正当化を試みつつも、貴重な歴史の手がかりを提供しています。

主要な作品群

エレンブルグは多数の作品を書いており、代表的なものには以下のようなものがあります：

• - 『フリオ・フレニト』（1922年）
• - 『ニコライ・クルボフの生涯と破滅』（1923年）
• - 『パリ陥落』（1941年）
• - 『嵐』（1947年）
• - 『雪どけ』（1954年）
• - 『回想録』（1964年）

これらの作品は、彼の文学的な成長の過程を示す重要な作品であり、エレンブルグの思想や感情を表現しています。また、彼の作品は日本語にも数多く翻訳されており、多くの読者に親しまれています。

エレンブルグは、文壇だけでなく政治的活動にも意欲的に関わりました。彼の活動は、ソ連の文学界における大きな流れを形成し、今なおその影響を感じることができます。

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