イリュリア王国

イリュリア王国（ドイツ語: Königreich Illyrien、スロベニア語: Ilirsko kraljestvo、イタリア語: Regno d'Illiria、クロアチア語: Kraljevina Ilirija）は、1816年から1849年まで存在したオーストリア帝国の構成国の一つです。この王国は、1809年にフランス帝国に割譲されたイリュリア地域が、1816年にウィーン会議の結果、オーストリア帝国に復帰した際に成立しました。

イリュリア王国の変遷

イリュリア王国は、その成立に至るまでに複雑な歴史的背景を持っています。1809年にナポレオン戦争の影響でオーストリア帝国からフランス帝国に割譲されたイリュリア地域は、フランスの支配下で「イリュリア州」として統治されていました。しかし、1815年の第六次対仏大同盟戦争でのオーストリアの勝利によって、この地域は再びオーストリア帝国の支配下に置かれることになります。1816年のウィーン会議での最終決定により、イリュリア地域はオーストリア帝国に正式に復帰し、新たに「イリュリア王国」として再編されました。イリュリア王国の行政的な中心はリュブリャナに置かれ、その後トリエステに移されました。

しかし、イリュリア王国は1848年革命の余波を受け、その存在を終えることになります。1849年、王国はカルニオラ公国、ケルンテン公国、そしてオーストリア沿海州へと分割され、短期間の歴史に幕を閉じました。

イリュリア王国の領域

イリュリア王国の領域は、旧フランス帝国領イリュリア州のうち、サヴァ川以南のクロアチアとダルマチアを除く地域でした。具体的には、カルニオラ、ケルンテン、そしてアドリア海沿岸のゴリツィア、トリエステ、イストリア半島が含まれていました。この地域は、現在のオーストリア南部、イタリア北東端、スロベニアの中央部と西部、そしてクロアチアの北西部にまたがっており、以下の地域に相当します。

オーストリア：ケルンテン州
イタリア：フリウリ＝ヴェネツィア・ジュリア自治州東部（旧トリエステ県及び旧ゴリツィア県）
スロベニア：プリモルスカ地方、クラニスカ地方、コロシュカ地方
クロアチア：イストリア地方北西部（イストラ郡全域、プリモリェ＝ゴルスキ・コタル郡東端を除く地域及び同郡のラブ島を除く諸島部）

1822年には、サヴァ川右岸地域とリエカ（現在のプリモリェ＝ゴルスキ・コタル郡中部）が、ハプスブルク君主国の一部であるハンガリー王冠領のクロアチア王国に再統合されました。

イリュリア王国の遺産

イリュリア王国は短命に終わりましたが、その歴史は、この地域が様々な文化や民族が交錯する場所であったことを物語っています。この王国は、オーストリア帝国という大きな枠組みの中で、各地域がどのように組み込まれ、また、どのように変化していったかを理解する上で重要な役割を果たしています。

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