イリーナ・メジューエワ

イリーナ・メジューエワ（Irina Mejoueva、ロシア語: Ирина Межуева、1975年 - ）は、旧ソビエト連邦（現ロシア連邦）に生まれた国際的なピアニストです。

幼少期と教育

旧ソ連のゴーリキー市（現在のロシア連邦ニジニ・ノヴゴロド）に生まれたメジューエワは、5歳の時にピアノとの出会いを果たします。後にモスクワの名門、グネーシン音楽大学に進学し、高名な教授であるヴラディミール・トロップ氏のもとで集中的な研鑽を積み、その音楽的才能を開花させました。

国際的な活躍の始まり

音楽大学での学びを終えた後、彼女はピアニストとしてのキャリアを本格的にスタートさせます。1992年には、オランダのロッテルダムで開催されたエドゥアルト・フリプセ国際ピアノ・コンクールに出場し、見事優勝を果たしました。この栄誉ある受賞を契機に、ヨーロッパ各地で演奏の機会を得て、その名を広めていきました。

日本への移住とアジアでの活動

ヨーロッパでの活動が続く中、1997年に自身のレコーディングを担当していた日本コロムビアのプロデューサーとの結婚を機に、日本の古都、京都へと生活と活動の拠点を移しました。日本に定着してからは、国内のみならず、中国や韓国をはじめとするアジア各国へと活動範囲を広げ、意欲的な演奏活動を展開しています。その温かく誠実な音楽性で、各地の聴衆から高い評価を得ています。

音楽性とレパートリー

メジューエワのレパートリーは非常に幅広く、バロック時代の巨匠から20世紀の近現代作品に至るまで多岐にわたります。特にロシアの作曲家ニコライ・メトネルの作品には深く傾倒しており、自身の演奏活動や録音において、メトネルの知られざる傑作を積極的に取り上げ、その普及に努めています。これまでに、サンクトペテルブルク交響楽団、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団といった海外の主要オーケストラや、日本フィルハーモニー交響楽団、読売日本交響楽団など日本の著名なオーケストラとも数多く共演を果たしています。

録音活動

これまでに、日本コロムビアや若林工房といったレーベルから数多くのCDをリリースしています。これらの録音は、彼女の幅広いレパートリーと深い音楽解釈を示すものとして、多くの音楽ファンや評論家から支持されています。

受賞歴

彼女の卓越した芸術性は、国内外で高く評価されており、いくつかの権威ある賞を受賞しています。

1992年：エドゥアルト・フリプセ国際ピアノ・コンクール 優勝
2006年：青山音楽賞 受賞
2010年：レコード・アカデミー大賞（器楽曲部門）受賞
2015年：第27回ミュージック・ペンクラブ音楽賞（クラシック部門、独奏独唱部門賞）受賞

その他の活動

演奏活動と並行して、教育活動にも力を入れています。2021年からは大阪音楽大学の客員教授として、後進の指導にあたっています。また、メディアへの出演や執筆活動も行っており、2017年には講談社現代新書より著書『ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ』を出版し、ピアノ音楽の魅力を広く伝えています。

イリーナ・メジューエワは、ロシアの音楽的伝統を背景に持ちながらも、日本を新たな拠点として国際的に活躍を続ける、現代を代表するピアニストの一人です。その誠実な音楽への姿勢と豊かな表現力は、今後も多くの聴衆を魅了し続けることでしょう。

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