イングランドの行政区画

イングランドの地方行政区分は、地方自治を円滑に進めるため、リージョン、カウンティ、ディストリクト、パリッシュの4つの階層で構成されています。それぞれの階層には独自の役割と権限があり、複雑な構造となっていますが、歴史的経緯や行政上の必要性から生じたものです。

リージョンレベル： 最上位の区分で、イングランド全土は9つのリージョンに分けられています。リージョンは、複数のカウンティレベルの行政体を包含し、地域全体の計画や調整を担います。ロンドンは独自の市長と大ロンドン庁を有し、他のリージョンとは異なる地方分権が進んでいます。リージョンの規模は、面積や人口で大きく異なっています。

カウンティレベル： カウンティは、地方長官（Lord Lieutenant）の任官地として定義される典礼カウンティと、地方行政上のカウンティの2種類があります。典礼カウンティは、住所表記などで使用されますが、行政区画としては必ずしも機能しません。地方行政上のカウンティは、都市カウンティ、シャイアカウンティ、単一自治体の3種類に分類されます。

都市カウンティ： 大都市とその周辺地域を包含する6つのカウンティで、それぞれがさらに小さな行政区画（都市ディストリクト）に分割されています。1986年にカウンティ議会が廃止され、その権限は都市ディストリクトに移譲されました。
シャイアカウンティ： 主に郊外地域をカバーするカウンティで、非都市ディストリクトに分割されています。カウンティ議会と非都市ディストリクト議会が、それぞれ異なる権限を分担して行政を行っています。
単一自治体： カウンティとディストリクトの機能を併せ持つ行政単位で、1990年代に創設されました。ディストリクトを一つだけ有するカウンティ、またはカウンティ議会を持たないディストリクトなどが含まれます。ワイト島のように、ディストリクトを持たないカウンティも存在します。
グレーターロンドン： ロンドン特別地域で、都市カウンティとは異なる独自の制度を持っています。シティ・オブ・ロンドンと32のロンドン・バラ（London borough）に分割され、大ロンドン庁が戦略的な役割を担っています。

ディストリクトレベル： カウンティの下位に位置し、バラ、シティ、ロイヤル・バラなどの地位を持ちます。都市カウンティは都市ディストリクトに、シャイアカウンティは非都市ディストリクトにそれぞれ分割されています。それぞれのディストリクトは、独自の議会と行政組織を有しています。

パリッシュレベル： 最下位の行政単位で、シヴィルパリッシュ（行政教区）と呼ばれます。グレーターロンドンを除くイングランド全域に存在するわけではありませんが、その数とカバーする面積は増加傾向にあります。

例外： 上記の一般的な地方行政機構の枠にはまらない、特別な行政単位も存在します。

ロンドン・バラ： グレーターロンドン内の32のロンドン・バラは、単一自治体と似た地位を有しますが、大ロンドン庁の監督下にあります。
シティ・オブ・ロンドン： ロンドンの中心部に位置する歴史的な地域で、独自の行政組織と権限を持ち、他の地域とは異なるサービスを提供しています。
法曹学院： インナー・テンプルとミドル・テンプルは、シティ・オブ・ロンドン内に位置する独自の行政体です。
シリー諸島： イングランド本土とは異なる独自の行政単位で、シリー諸島カウンシルが運営されています。

イングランドの地方行政区分は、歴史的背景や地理的条件、行政上の必要性などを反映して複雑な構造となっています。それぞれの階層や行政単位の役割と権限を理解することは、イングランドの政治や社会を理解する上で不可欠です。

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