インディアマン

インディアマン：東西交易を支えた巨大帆船

インディアマン（East Indiaman）は、17世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパ各国の東インド会社によって運用された貿易船の総称です。デンマーク、オランダ、イギリス、フランス、ポルトガル、スウェーデンの各東インド会社に所属し、東西交易の重要な役割を担いました。

インディアマンの役割

インディアマンは、単なる輸送船ではなく、乗客と貨物の輸送、そして海賊からの防御という複数の役割を担っていました。初期のインディアマンは、速度よりも積載量を重視して建造され、大砲などの武装も施されていました。これは、東インド会社が独占的にインドや中国との貿易を行っていたため、護衛の必要性が高かったからです。船体は、大砲の搭載に適した構造であり、喫水線付近が最も幅広くなるタンブルホームという形状をしていました。また、船尾には窓付きの船尾楼が設けられ、航海中の快適性を向上させていました。

イギリス東インド会社とインディアマン

イギリス東インド会社は、1600年にエリザベス1世から喜望峰からホーン岬にかけての貿易独占権を与えられました。この特権は1834年まで続きましたが、18世紀から徐々に撤廃されていきました。イギリスのインディアマンは、イギリス本国と喜望峰、そしてインドの主要都市（マドラス、ボンベイ、カルカッタ）の間を航行し、時には中国にも立ち寄ってから帰国しました。東インド会社の独占が失われると、旧来型のインディアマンは売却され、より小型で高速なブラックウォール・フリゲートに置き換えられていきました。

インディアマンの構造と特徴

インディアマンは、18世紀後半から19世紀にかけて建造された最大級の商船であり、一般的に1,000トンから1,400トン前後の大きさでした。船体は、大砲を搭載するために、上甲板よりも喫水線付近が幅広くなるタンブルホーム構造をしており、復元力を高めていました。船内には、通常2層の甲板があり、船尾には船尾楼が設けられていました。これらの特徴は、インディアマンの積載量を最大化しつつ、武装を施すことを可能にしました。しかし、船体ラインは速度の低下を招き、後期には採用されなくなりました。

戦争とインディアマン

フランス革命戦争やナポレオン戦争中、インディアマンはしばしば軍艦に似た塗装を施しました。これは、敵艦に砲門の真偽を判断させにくくし、自衛の手段とするためでした。イギリス海軍は、いくつかのインディアマンを徴用し、戦列艦に改造しました。また、インディアマンの中には、フランスの攻撃を撃退した例もあります。特に有名なのは、1804年のプロ・オーラの海戦で、ナサニエル・ダンス代将率いるイギリスの商船団が、フランス海軍の襲撃部隊を撃退した事件です。

インドで建造されたインディアマン

歴史家のフェルナン・ブローデルによると、18世紀から19世紀初頭にかけて、最も優れたインディアマンの一部はインドで建造されたものでした。インドの造船技術で作られたこれらの船は、インド人の船員が乗り組み、特にチーク材は周辺の海域に適していました。これらの船は、中国への航海に使われることが多く、蒸気船が就航するまで、イギリスの東洋での輸送を担っていました。ヨーロッパへの航海には使われませんでしたが、イギリスのために多数のインド製インディアマンが建造されました。

著名なインディアマン

ウォーレイ（Warley）: 1788年建造の1,176トン級のインディアマン。後にイギリス海軍に購入され、カルカッタ（HMS Calcutta）と改名されました。オーストラリアへの入植にも使用されました。
アーニストン（Arniston）: 1,200トン級のインディアマン。1815年にアガラス岬付近で難破し、多くの犠牲者を出しました。

インディアマンの終焉

イギリス東インド会社の独占が失われるにつれて、インディアマンのような武装商船は必要とされなくなりました。1830年代後半には、より小型で高速のブラックウォール・フリゲートが登場し、帆船による貿易の時代を締めくくりました。

参照

武装商船

脚注

外部リンク

東インド会社
* The East Indiaman Gotheborg project

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