インドネシアの国旗

インドネシアの国旗は、上部に赤、下部に白の二色からなる水平二色旗で、一般的に「紅白旗」と呼ばれています。正式名称はSang Merah Putih（サング・メラ・プティ）で、Merah（メラ）が赤、Putih（プティ）が白を意味します。赤は勇気と情熱、白は真実と清らかさを象徴し、Sang（サング）は敬意を表す称号です。

この国旗のデザインは、モナコの国旗と同一ですが、縦横比が異なります。インドネシア国内では、この国旗は単なる布地ではなく、深い歴史と国民の誇りを込めた象徴として認識されています。その起源は、独立運動期にさかのぼります。1923年、オランダ領東インドからオランダに留学していたインドネシア協会が、この紅白旗を協会旗として採用しました。当初は旗の中央に水牛の頭部が描かれていましたが、1928年にはインドネシア国民党の党旗にも採用され、中央には野牛が描かれていました。この旗は次第に民族旗としての地位を確立し、インドネシア独立後、正式な国旗となりました。

しかし、その起源は独立運動期だけにとどまりません。インドネシア社会では、13世紀のマジャパヒト朝や16世紀のマタラム朝において、紅白旗が用いられていたという歴史的説話も存在します。また、ジャワの伝統文化においても、赤は男性のエネルギー、白は女性の純潔を象徴する色として古くから認識されており、紅白旗の起源を説明する要素となっています。さらに、赤と白はそれぞれ太陽と月を表す色としても親しまれており、赤は自由と勇気、白は正義と純潔を象徴するとされています。オランダの植民地支配下にあった時期には、オランダ国旗から青色の部分を省いたものが、民族運動の旗印として使用された歴史も背景に存在します。

独立記念日の国旗掲揚式は、インドネシアの伝統衣装を身につけた男女2名と、郷土防衛義勇軍（ペタ）の軍服を着た1名によって行われるのが伝統でした。これは1945年8月17日の独立宣言の際に、ペタの上級士官ラティフ・ヘンドラニングラットが紅白旗を掲げたことに由来します。しかし、2000年以降は、1999年に新設されたインドネシア国民国旗掲揚隊がインドネシア軍の軍服を着用して掲揚式を行っています。

デザインの類似性に関しては、モナコの国旗以外に、ウィーン市の旗やフランケン地方の旗（紋章を除く）なども類似したデザインをしています。これらの旗との類似点と相違点を比較検討することは、インドネシアの国旗の歴史的背景をより深く理解する上で重要です。

参考文献

Anderson, Benedict R. O'G. (1972). Java in a Time of Revolution: Occupation and Resistance, 1944-1964. Cornell University Press
インドネシア国立文書館（編著）、倉沢愛子・北野正徳（訳）『ふたつの紅白旗 インドネシア人が語る日本占領時代』、木犀社、1996年（Arsip Nasional Republik Indoneisa, Di Bawah Pendudukan Jepang: Kenangan Empat Puluh Dua Orang yang Mengalaminya, 1988）
冨尾武弘「国旗」、石井米雄（監修）、土屋健治・加藤剛・深見純生（編集委員）『インドネシアの事典』、同朋舎出版、1991年
永積昭『インドネシア民族意識の形成』東京大学出版会、1980年。

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