インドネシア国家英雄

インドネシア国家英雄とは

インドネシア国家英雄（Pahlawan Nasional Indonesia）は、インドネシアにおいて最高の栄誉とされる称号です。この称号は、インドネシアの独立、発展、または社会の進歩に大きく貢献した人物に対して、その功績を称え、国民の記憶に留めるために死後授与されます。

概要

国家英雄の制度は、1958年の大統領令第241号によって確立されました。最初にこの称号を授与されたのは、作家で政治家のアブドゥル・ムイスであり、1959年のことでした。1960年代にスハルト政権下で、称号は「独立国家英雄」から現在の「国家英雄」へと名称が変更されました。

国家英雄には、9月30日事件（インドネシア共産党によるクーデター未遂事件）の犠牲者に与えられた「革命英雄」や、インドネシア独立宣言を読み上げたスカルノとモハマッド・ハッタに与えられた「独立宣言英雄」といった、特別な称号も存在します。

国家英雄として認められた人物の遺族には、年金、医療費補助、住宅手当などの手厚い待遇が支給されます。

国家英雄は、インドネシア全土から選ばれており、その出身地は東のパプア州から西のアチェ州まで広がっています。また、民族、職種も多岐にわたり、政治家、王族、革命家、軍人、聖職者、作家、ジャーナリストなど、多様な背景を持つ人物が名を連ねています。

認定過程

認定条件

インドネシア社会省は、国家英雄の認定条件として、以下の7つの条件を定めています。

1. 故人であること。
2. 生涯を通じて、国家のために武力闘争を指揮、または国家の利益となる概念や製品を発明したこと。
3. 国民が果たすべき義務を超えた貢献をしたこと。
4. その行動が広範囲に影響を及ぼしたこと。
5. 高い愛国心を備えていること。
6. 人格的、道徳的に優れていること。
7. 敵に降伏しなかったこと。
8. 自ら築いた遺産を傷つけることがなかったこと。

選考

選考は、以下の4段階を経て行われます。

1. 一般市民が市長または市政府機関に候補者を提案。
2. 市長が州知事に推薦。
3. 社会省と選考委員会が各州の候補者リストを協議。
4. 大統領が最終的に認定。

選考委員会は、学者2名、軍関係者2名、勲章・称号受章経験者3名の計7名で構成されています。認定者は、ジャカルタで開催される授与式で、選考委員長を務める大統領から称号を授与されます。2000年以降、授与式は英雄の日に合わせて11月上旬に開催されています。

認定には政治的な理由が介在することもあり、スカルノとハッタの認定の際には、委員会との協議が行われず社会省単独の推薦だったという指摘もあります。また、長期にわたり独裁政権を敷いたスハルトの認定については、支持する勢力と独裁を理由に反対する勢力が存在し、賛否両論が巻き起こっています。そのため、現在まで認定には至っていません。

インドネシア国家英雄は、インドネシアの歴史と文化において重要な役割を果たしており、その選考過程は、インドネシア社会の価値観と政治的状況を反映しています。

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