インド共産党マルクス主義派

インド左派共産党 (CPI-M)

インド左派共産党（英語略称：CPI-M）は、南アジア最大の国インドにおいて重要な位置を占める共産主義政党の一つです。その正式名称は「インド共産党マルクス主義派（Communist Party of India-Marxist）」であり、ヒンディー語では「マカパ（मार्क्सवादी कमयुनिस्त पार्टी, MaKaPa）」とも呼ばれています。

成立の経緯

この党の起源は、1964年に当時のインド共産党（CPI）から分離・独立したことにあります。当時のインド共産党内部には、政治路線における修正主義的な傾向や党内派閥の対立が存在しており、これに反対した急進的なグループが新たな共産主義政党の結成を決断しました。彼らは自らを「インド共産党マルクス主義派」と称し、これによりインドの共産主義運動は大きく二つの流れに分裂することになりました。現在でも、このインド左派共産党（CPI-M）と元のインド共産党（CPI）は、共通の目標の下で「左翼戦線」を組織し、選挙協力を行うなど連携関係にあります。

党員数については、2002年時点での発表によれば、約81万4,400人の党員を擁するとされていました。現在の書記長はシタラム・イェチュリ氏が務めています。

党名の由来と通称

「インド共産党マルクス主義派」という名称は、原語に忠実な訳ですが、日本語では長いため、しばしば「インド左派共産党」という通称が用いられます。この通称は、1964年の分裂後も「インド共産党（CPI）」として存続した穏健派の党と区別するために用いられるようになったものです。同じ「インド共産党」という名称を持つ政党が複数存在するため、特にこのマルクス主義派を示す際に「インド左派共産党」という表現が便宜的に使用されています。

政治的な影響力とかつての隆盛

インド左派共産党（CPI-M）は、特に西ベンガル州とケーララ州という二つの州を長年にわたる強力な地盤としてきました。これらの州では、左翼戦線の中核として何度も州政権を獲得し、福祉政策や土地改革などを推進しました。

また、連邦議会（ローク・サバー）においては、国民会議派とインド人民党という二大政党のいずれも単独過半数に届かない状況下で、キャスティング・ボートを握る第三極として大きな影響力を持っていました。党からはソームナート・チャタルジー氏が連邦下院議長に選出されるなど、その存在感は国政レベルでも非常に大きいものでした。

過去には、インド国民会議を中心とする統一進歩同盟に対し、政権への参加はせずに閣外協力を行うという形で協力関係を築き、政策決定にも深く関与していました。

近年の衰退と現在の状況

しかし、その政治的影響力は近年大きく変化しています。2008年7月、米印原子力協力に関する合意に対する反対を理由に、統一進歩同盟との閣外協力を解消したことが、一つの転換点となりました。

その後の選挙では厳しい結果が続きました。2009年の連邦下院選挙では議席を大幅に減らし、かつての第三党の座を失い、わずか16議席にとどまりました。さらに、西ベンガル州では、タタ・ナノ工場誘致を巡る強引な土地収用策への反発などが広がり、長年政権を担ってきた地盤を失いました（2011年州議会選挙）。ケーララ州でも政権を失うなど、かつての二大拠点での勢いに陰りが見えました。

連邦下院選挙における退潮は続き、2014年には9議席、2019年には3議席と、議席数をさらに減らしました。国政における存在感は大きく低下しています。

一方で、全ての地盤を失ったわけではありません。2013年にはトリプラ州議会選挙で勝利して政権を維持しました（後に喪失）し、ケーララ州においては2016年の州議会選挙で再び政権を奪還しました。2025年現在も、ケーララ州において州政権を運営しており、この州は党にとって最も重要な地盤であり続けています。

かつての隆盛期と比較すると国政での影響力は大きく後退しましたが、インド左派共産党（CPI-M）は現在も特定の州を拠点に活動を展開する、インドの政治において無視できない存在であり続けています。

もう一度検索