インヌミ収容所

インヌミ収容所：沖縄戦後の引揚者の拠点

インヌミ収容所は、沖縄戦後、アメリカ軍によって沖縄県沖縄市（旧美里村）高原に設置された海外引揚者収容所です。キャステロ海外引揚民収容所（Camp Castello）やインヌミヤードゥイとも呼ばれていました。

概要

1945年、沖縄戦で米軍は多くの民間人を収容し、収容所間を転々と移動させました。また、本土や海外にいた沖縄出身の移民、疎開者、元兵士たちは、米軍による封鎖のため、故郷への帰還が困難な状況にありました。1945年10月以降、引揚げが開始され、美里村字高原（現在の沖縄市高原）にあった米海軍部隊駐屯跡が収容所として利用されるようになりました。これがキャステロ海外引揚民収容所であり、インヌミ収容所、インヌミヤードゥイとして広く知られるようになりました。

米軍が引揚げを受け入れるようになった1946年7月1日に正式に開所しました。同じ月には中城村の久場崎収容所も開所し、同年12月31日まで運営されました。インヌミヤードゥイは、1949年7月23日にグロリア台風の被害を受けた後、知念地区の旧警察署跡に移転するまで、引揚業務の拠点として長く機能しました。11月1日には、移転後の知念のキャステロ収容所にソ連からの復員兵が収容され、以降はシベリアからの引揚げ業務も行いました。

1949年までに、国内外から沖縄へ引揚げてきた人々は約17万人に達したとされています。その多くは久場崎桟橋で船を降り、米軍のトラックでインヌミに収容されました。そこで、多くの帰還者は変わり果てた故郷の姿を目にすることになりました。引揚者は通常、1日から1週間程度で手続きが完了しましたが、中には1ヶ月近く収容所での生活を余儀なくされた人々もいました。故郷が米軍基地として接収され、帰村できない引揚者の中には、インヌミ周辺でテント生活を送る人もいました。

日本経由の帰還者

海外からの引揚者の受け入れ業務は、引揚援護局が担当しました。引揚援護局は、各帰港地で検疫や帰還援護業務を行いました。沖縄への引揚げを担当した引揚援護局は、浦賀、名古屋、佐世保、鹿児島、大竹、宇品が送出港に指定されていました。海外から日本本土を経由して帰還する沖縄県人は、まず日本の各地の引揚港で下船し、そこから列車で広島や九州へ移動し、さらに引揚船で沖縄へ向かいました。その際、奄美と沖縄県出身者に対しては「非日本人登録」が行われました。引揚者の中で天然痘が発生したため、GHQは1946年3月18日付で8月15日まで沖縄への送還を一時停止しました。

米軍の報告によると、沖縄への引揚者は1946年10月後半には週9,000人という規模に膨れ上がり、8月から12月までの5ヶ月間に約10万4千人が沖縄本島に帰還しました。また、輸送中に32人が生まれ、17人が亡くなっています。正規のルートを経ずに密入国のような形で帰還した人々もいました。

引揚者が上陸した港は久場崎海岸でした。そこでDDT消毒などが行われた後、収容年月日、氏名、移民先などが記録され、その後、インヌミまたは久場崎収容所に送られました。現在、中城村字久場後浜原には、戦後引揚者上陸碑が建立されています。

新里の海外引揚者収容所

1949年7月23日に沖縄を襲ったグロリア台風により、インヌミ収容所は壊滅的な被害を受けました。米軍は7月25日に収容施設を知念地区の旧警察署跡に移転しました。11月には、引揚げ業務は佐敷村字新里の高台にあった新里通信所の沖縄民政府警察部の建物に移されました。新里の沖縄民政府もグロリア台風で壊滅し、念願の那覇移転が実現したため、その跡地に収容施設が移転した形となります。

銃剣とブルドーザー

1950年代になると、米軍は沖縄戦から復興しようとする県民の生活基盤を再び強制接収という形で奪い始めました。宜野湾市の伊佐浜では、銃剣とブルドーザーによって田畑や住居を奪われた「伊佐浜難民」が、近くの小学校に一時避難した後、インヌミヤードゥイに仮住まいを余儀なくされました。瓦礫が残る高原では畑を作ることもできず、急ごしらえの木造トタン葺きの家々は1956年9月のエマ台風で再び倒壊しました。その後、10世帯はブラジルへの移住を余儀なくされました。

参考文献

厚生省引揚援護局『引揚げと援護三十年の歩み』1977.10
沖縄市企画部平和文化振興課『インヌミから 50年目の証言』 沖縄市史資料集、1995
* 伊敷勝美「引揚げと収容所からの出発」浦添市立図書館紀要、2001-03-23

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