沖縄民政府

沖縄民政府とは

沖縄民政府（おきなわみんせいふ、Okinawa Civilian Administration）は、第二次世界大戦後の沖縄諸島がアメリカ軍の統治下にあった時代に、1946年4月24日に設立された行政機構です。この政府は、アメリカ軍政府の諮問機関として機能し、住民に対する命令の伝達と履行の促進を主な役割としていました。

設立の背景

沖縄民政府は、それ以前に存在した沖縄諮詢会を継承する形で設立されました。沖縄諮詢会は、軍政府の諮問機関として機能していましたが、沖縄民政府は、より行政的な役割を担うことを目指して設立されました。しかし、実際には、民政府は名ばかりで、その権限は琉球列島米国軍政府（以下「軍政府」）の絶対的な権力の下に置かれていました。

組織と運営

沖縄民政府のトップには、沖縄民政府知事が置かれました。初代知事には、沖縄諮詢会委員長の志喜屋孝信が任命されましたが、これは公選によるものではありませんでした。知事の諮問機関としては、沖縄議会（後に沖縄民政議会に改称）が設置されましたが、その議員も軍政府の任命によるもので、公選ではありませんでした。

同時期には、奄美諸島に臨時北部南西諸島政庁、宮古諸島に宮古民政府、八重山諸島に八重山民政府が設立されていますが、これらの政府の知事や議員も公選ではなく、軍政府の任命によるものでした。これらの事実から、民政府がアメリカ軍の支配下にあったことがわかります。

行政機構

沖縄民政府の行政機構は、知事の下に以下の部局が設置されていました。

総務部
法務部
文教部
文化部
公衆衛生部
社会事業部
工業部
商務部
農務部
労務部
財務部
通信部
水産部
警察部
* 工務部

これらの部局が、沖縄の行政を担っていました。

沖縄議会

沖縄議会は、沖縄民政府知事の諮問機関として機能しました。議員は、戦前の沖縄県会議員とアメリカ軍政府が任命した議員によって構成されていました。1949年には、沖縄民政議会に改組されましたが、議決権はなく、知事の諮問に答える権限しかありませんでした。

しかし、議員の中には、後に沖縄人民党書記長や日本共産党副委員長を務めた瀬長亀次郎や、戦前に沖縄県会議員であった仲宗根源和など、民政府を厳しく批判する者もいました。彼らは、民政府の民主的な運営を強く求めていました。

民政府への批判と民主化運動

1947年には、沖縄民主同盟が戦後初の政党として結成され、続いて沖縄人民党、沖縄社会党が結成されました。これらの政党は、沖縄議会を通じて知事や議員の公選などの民主化を要求し、民政府を批判しました。これらの動きは、沖縄の人々の民主的な自治を求める強い意志を示すものでした。

シーツ善政による転換

1950年には、ジョセフ・R・シーツ陸軍少将による政策転換（いわゆるシーツ善政）により、沖縄民政府に代わる形で奄美・沖縄・宮古・八重山の各諸島に群島政府と公選の知事および議会が設置されました。これにより、沖縄の行政は、より民主的な方向へと進むことになりました。

まとめ

沖縄民政府は、アメリカ軍政下における沖縄の行政を担った重要な機関でしたが、その実態は軍政府の支配下にあり、住民の自治権は制限されていました。しかし、民政府に対する批判や民主化運動の高まりは、その後の沖縄の自治権確立への重要なステップとなりました。

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