銃剣とブルドーザー

銃剣とブルドーザー：沖縄における米軍の土地強制接収

「銃剣とブルドーザー」とは、朝鮮戦争下の1950年代に、アメリカ軍（以下、米軍）が占領下の沖縄で、武装兵を送り込んで基地を拡大した一連の土地の強制接収を指す言葉です。沖縄戦後、米軍は占領下にあった沖縄で基地建設をさらに進めるため、1953年4月に「土地収用令」を公布しました。この法令のもと、米軍は住民の土地と家屋を奪い、抵抗する人々を武装兵力で排除し、ブルドーザーで家屋を破壊しながら軍用地を拡大していきました。

概要

沖縄戦中、米軍は住民を収容所に送り込みながら広大な土地を接収し、基地建設を進めました。1951年のサンフランシスコ講和条約発効後、接収された土地の補償を求める声が高まり、1952年11月には、米国民政府布令第91号「契約権について」が公布されました。しかし、この布令で定められた賃貸借条件は、20年間の賃貸借期間、一坪あたりの年間賃料がわずか2セント（B円1円80銭程度）、約9坪でコカコーラ1本分という悪条件であり、ほとんどの住民が契約に応じませんでした。

1953年4月、米国民政府は軍用地接収の手続きを定めた米国民政府布令第109号「土地収用令」を公布し、強制的な土地接収を本格化させました。武装兵によって住民の土地が奪われ、家屋はブルドーザーで破壊されました。アイゼンハワー大統領は1954年1月に沖縄基地の無期限保有を宣言し、米国民政府は軍用地料の「一括払い」を公表しましたが、住民はこれに強く反発しました。琉球政府は、1.一括払い反対、2.適正補償、3.損害賠償、4.新規接収反対、という4つのスローガンを掲げ、米軍に対抗しました。

具体的な事例

真和志村 銘苅・安謝・天久

沖縄戦の激戦地であった真和志村（現・那覇市）では、多くの住民が犠牲となり、土地は焦土と化していました。生き残った住民は収容所に送られ、故郷に帰還できたのは1947年頃でした。1952年10月、米国民政府は銘苅、安謝、天久の集落を12月10日までに明け渡すよう通告しましたが、立法院はこれを拒否しました。しかし、1953年4月3日に「土地収用令」が発令され、4月11日早朝には米軍の武装兵に警護されたブルドーザーが土地を接収しました。接収された土地は米軍の住宅地「牧港住宅地区」となり、プール、スケート場、ゴルフ場、小学校などが建設されました。この土地は1987年に返還され、不発弾処理などの後、2009年には「那覇新都心地区おもろまち」として再開発されました。

小禄村 具志

現在の那覇空港がある場所は、かつて小禄村と呼ばれていました。1933年、日本軍が小禄飛行場を建設するために土地を強制接収しており、沖縄戦後も米軍の各種空港施設として利用されていました。米軍が具志などの住民に帰村を許可したのは1947年8月でしたが、米軍はこの時点で既に小禄村の面積の70%以上を占有していました。住む場所を奪われた住民は、米軍が廃棄したテントやトタン葺きの仮住まいで生活していました。1953年4月、米国民政府はさらに住宅地となる軍用地を強制接収するため、12月5日に具志に武装兵を出動させ、残りの土地を強制接収しました。

伊江島 真謝・西崎

沖縄戦で激戦地となった伊江島では、住民の約半数が命を落としました。米軍はその後、伊江島補助飛行場を建設するため、住民を収容所に強制収容しました。帰島が許可されたのは1947年3月のことでした。1953年7月、米軍は地上標的の造成を目的として真謝、西崎の住民に立ち退きを通告し、1955年3月には家屋を焼き払い、ブルドーザーで破壊して土地を接収しました。この地上標的は、当時開発されたばかりのLABS（低高度爆撃法）という核爆弾投下訓練に使われました。阿波根昌鴻らは非暴力による「乞食行進」を行い、土地強奪の不当性を訴えました。

宜野湾村 伊佐浜

宜野湾は沖縄戦の激戦地であり、多くの住民が犠牲になりました。米軍は普天間飛行場をはじめとする多くの基地を建設し、住民の帰村は困難を極めました。1954年4月、米軍は「沖縄有数の美田」と言われた伊佐浜の土地に水稲の植え付けを禁止し、立ち退きを勧告しました。1955年3月には強制接収が始まり、座り込みをしていた住民は強制退去させられました。7月19日、武装兵が警備する中、ブルドーザーが耕地の地ならしを始めました。住民は抵抗しましたが、30世帯あまりが生活の場を失いました。伊佐浜の女性たちは「農地がない場所へ移動すれば子供たちの養育はできない」と訴え、琉球政府に直訴しました。土地を奪われた住民は沖縄市高原の仮住まいで生活し、一部はブラジルへ移住しました。

読谷村 渡具知

読谷村は沖縄戦で米軍が最初に上陸した場所であり、村の大半が米軍基地化されていました。渡具知区の住民は、1951年に6年ぶりに帰村を許可されたものの、1953年1月には米軍から再び立ち退き命令を受けました。住民は立ち退き取り消しを求めましたが、1953年8月に比謝後原へ移住しました。

その後

1960年頃になっても、ベトナム戦争や冷戦の激化を背景に、沖縄での土地収用は続きました。那覇軍港、ホワイトビーチ、嘉手納飛行場などで拡張工事が行われ、具志川市昆布、糸満市喜屋武、知念村志喜屋でも新たな土地接収が行われました。

「銃剣とブルドーザー」は、沖縄における米軍の強制的な土地接収の象徴であり、沖縄の人々の苦難の歴史を今に伝える言葉です。

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