インノケンティウス7世 (ローマ教皇)

インノケンティウス7世（Innocens VII, 1336年 - 1406年11月6日）は、15世紀初頭の教会大分裂時代にローマ教皇を務めた人物です。在位期間は1404年から1406年と短く、この時期はアヴィニョンに拠点を置く対立教皇ベネディクトゥス13世が存在し、教会の分裂が深刻化していました。彼はアブルッツォ地方の都市スルモーナ出身で、本名はコジモ・デ・ミリョラーティと言います。

生い立ちと教会でのキャリア

コジモ・デ・ミリョラーティは、ボローニャ大学で法律を学び、その後ペルージャ大学とパドヴァ大学で法学教授として教鞭を執りました。教皇ウルバヌス6世の時代にローマ教皇庁に入り、その卓越した知識と能力を発揮しました。1387年にはラヴェンナ大司教に任命され、1389年にはボローニャ大司教に昇進しました。同じ年には、ボニファティウス9世から枢機卿に任命され、さらに1390年には教皇特使として北イタリアに派遣されました。

教皇選出とローマでの混乱

1404年、教皇ボニファティウス9世が亡くなると、コンクラーヴェ（教皇選挙）でコジモ・デ・ミリョラーティが教皇に選出され、インノケンティウス7世として即位しました。しかし、ローマでは市民の間で不穏な動きが見られたため、ナポリ王ラディズラーオ1世の仲介により、市民との一時的な和解が成立しました。ところが、教皇は甥のルドヴィーコ・ミリョラーティにローマの治安維持を委ねましたが、このルドヴィーコがローマ市民の指導者層11人を殺害するという事件を起こしました。

ローマ市民の反乱と晩年

1405年、この事件をきっかけにローマ市民が大規模な反乱を起こし、インノケンティウス7世はローマを離れてヴィテルボに逃れざるを得なくなりました。反乱が鎮圧された後、教皇はローマに戻ることができましたが、1406年に急逝しました。教皇在位中は、教会分裂を解消するための対立教皇ベネディクトゥス13世との交渉は進展せず、その解決は次の教皇グレゴリウス12世に引き継がれることになりました。

インノケンティウス7世は、その短い在位期間にもかかわらず、教会大分裂という混乱期において、その重責を担いました。彼の死後、教会分裂の解決には時間がかかりましたが、彼の時代が次の教皇による分裂解消への重要な転換点となったことは間違いありません。

参考文献

学校法人 上智学院 新カトリック大事典編纂委員会編『新カトリック大事典 第1巻』研究社、1996年。
P.G.マックスウェル・スチュアート著、月森左知・菅沼裕乃訳、高橋正男監修『ローマ教皇歴代誌』創元社、1999年。
* マシュー・バンソン著、長崎恵子・長崎麻子訳『ローマ教皇事典』三交社、2000年。

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