インペリアルビル

インペリアルビル：横浜の歴史を物語るモダニズム建築

インペリアルビルは、神奈川県横浜市中区山下町に佇む、ひときわ目を引くモダニズム建築です。その歴史は1930年（昭和5年）に遡り、当初は「上田屋ビルディング第二号館」として、外国人専用のアパートメントホテル（長期滞在型ホテル）として竣工しました。この名称は、当時ホテルニューグランドの裏手にあった「上田屋ビルディング第一号館」と対をなすものでした。

歴史

建設の背景には、ニューヨーク・タイムズ横浜支局員からの「外国人向けのアパートメントが必要である」という助言がありました。これにより、長期滞在を目的とした施設として設計されたのです。しかし、第二次世界大戦が勃発すると、その運命は大きく変わります。終戦後、約10年間もの間、インペリアルビルは進駐軍に接収され、ホテルニューグランドに滞在していたダグラス・マッカーサーを護衛する将校クラスの軍人たちが詰める場所となりました。この時期には、屋上に増築が行われています。

米軍による接収解除後、客室の設備の一部は本牧や根岸の住宅へと持ち去られてしまったため、宿泊施設としての再開は困難となりました。その後、インペリアルビルは主に港湾関係の事業者に貸し出され、新たな役割を担うこととなりました。

建築

インペリアルビルは、山下公園通りから1本内陸側の水町通りに面しており、その設計は、関内地区を中心に大正から昭和初期にかけて数々の建築を手がけた川崎鉄三によるものです。川崎氏が設計した現存する3棟の建築物の一つであり、その建築的価値は高く評価されています。2011年（平成23年）2月24日には、横浜市認定歴史的建造物にも選定されました。

外観の特徴としてまず挙げられるのは、水平に連続する窓が印象的なカーテンウォールです。24室の居室は、それぞれトイレとバスルームを備え、窓の内側にはガラス張りのベランダのような空間が設けられています。竣工当初、屋上にはテラスと噴水が設けられ、1階にはフレンチレストランやバー、売店が併設されていました。現在では、通りに面してブティックや薬局、クリーニング店が入居し、以前の客室はテーラーやデザイン事務所、設計事務所などに貸し出されています。

映像作品との関わり

インペリアルビルは、その独特な雰囲気から、数多くの映像作品の撮影にも使用されてきました。1962年の映画『涙を、獅子のたて髪に』、2013年のテレビドラマ『クロコーチ』、2015年のテレビドラマ『花咲舞が黙ってない2』など、そのリストは枚挙にいとまがありません。これらの作品を通じて、インペリアルビルの存在は広く知られるようになりました。

まとめ

インペリアルビルは、その歴史と建築的特徴から、横浜の近代建築を代表する存在と言えるでしょう。外国人向けのアパートメントホテルとして誕生し、戦後の激動期を経て、現在に至るまで、さまざまな形で横浜の歴史を見守り続けています。その存在は、横浜の街並みを彩る重要な要素であり、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

参考資料

日本建築家協会関東甲信越支部神奈川地域会まちづくり保存研究会 編『横浜近代建築 関内・関外の歴史的建造物』2012年11月29日、32頁。
NPO法人横浜シティガイド協会『ハマの建築探検』神奈川新聞社、2002年6月26日、66-67頁。ISBN 978-4-87645-315-3。

もう一度検索