イヴァノフ・ラズームニク

イヴァノフ・ラズームニク（本名：ラズームニク・ヴァシリエヴィッチ・イヴァノフ、1878年12月12日 - 1946年7月9日）は、20世紀ロシアの思想家、作家として知られています。彼は、トビリシの貧しい貴族の家庭に生まれ、サンクトペテルブルクの高等学校を経てペテルブルク大学の数学科に進学しました。

学生時代には、政治活動にも関わり、1901年の学生デモに参加したことで1902年には逮捕、投獄されました。その後、彼は文筆活動を開始し、1904年にはナロードニキの理論家ニコライ・ミハイロフスキーに関する文章を雑誌『ロシア思想』に発表しました。その後も、『ロシアの富』や『ロシア報知』などの雑誌に寄稿を続けました。1906年には、彼の名を一躍有名にした著作『ロシア社会思想史』全2巻を発表しました。

1908年には、著作『インテリゲンチヤ』を出版し、これは日本でも大正時代に翻訳出版されました。1910年代から1920年代にかけて、イヴァノフ・ラズームニクは社会革命党に接近し、ナロードニキ主義の立場からマルクス主義に対抗する論陣を張りました。彼は、ロシア革命後の1917年から1918年にかけて、アンドレイ・ベールイやセルゲイ・ムスティスラフスキーが編集した論文集『スキタイ人』に参加しました。この論文集は、セルゲイ・エセーニンやアレクサンドル・ブロークといったロシアの詩人に大きな影響を与えました。

しかし、1923年以降、イヴァノフ・ラズームニクは言論活動の場を奪われ、1937年には逮捕・流刑という不遇を経験します。1943年には、侵攻してきたドイツ軍によってリトアニア・東プロイセンの避難民キャンプに収容され、その後ミュンヘンで亡くなりました。彼の回想録『監獄と流刑』は、1953年にニューヨークで出版され、後にソルジェニーツィンの『収容所群島』でも資料として引用されることになりました。この回想録は、彼の激動の生涯を記録した貴重な資料となっています。

イヴァノフ・ラズームニクは、その生涯を通じて、ロシア社会の変革期における思想的潮流を体現した人物でした。彼の思想は、当時のロシア社会に大きな影響を与え、その著作は今日においても研究対象となっています。特に、彼のインテリゲンツィア論は、現代においても注目されています。彼の思想は、ナロードニキ主義とマルクス主義の対立という当時のロシア社会の重要な問題を反映しており、彼の著作は、この時代を理解する上で欠かせないものとなっています。

彼の著書は、ロシア社会思想史研究において重要な文献として位置づけられており、現代の読者にとっても、ロシアの思想史を深く理解する上で貴重な資料となっています。松原広志による研究や翻訳を通して、彼の業績はより広く知られるようになっています。彼の生涯は、ロシアの激動の歴史と深く結びついており、その思想は、現代社会においても重要な示唆を与えてくれます。

主な参考文献として、以下のものがあります。

松原広志『ロシア・インテリゲンツィヤ史』（1989年）
松原広志・訳『監獄と流刑―イヴァーノフ=ラズームニク回想記』（2016年、成文社）

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