イヴァン・アイヴァゾフスキー

イヴァン・コンスタンチノヴィチ・アイヴァゾフスキー（1817年 - 1900年）は、帝政ロシア時代に活躍したウクライナ出身の画家です。彼はアルメニア系の出自を持ち、その本名はホヴァネス・アイヴァジヤーンといい、一部の作品にはアルメニア文字で署名しています。

アイヴァゾフスキーは、生涯で数多くの風景画を残しましたが、その中でも特に海洋画で知られています。彼は、アメリカの画家ウィンズロウ・ホーマーと並び称される海洋画家の一人です。アイヴァゾフスキーは、クリミア半島のフェオドシヤで貧しいアルメニア人の家庭に生まれました。彼の類まれな画才は早くから認められ、経済的な支援を受けながらシンフェロポリのギムナジウムに進学しました。その後、ペテルブルク美術アカデミーで学び、金メダルを獲得して卒業しました。

初期には、風景画や海洋画で得た賞金でクリミアを訪れ、黒海沿岸の都市で肖像画家として活動しました。その後、ヨーロッパ各地を旅し、自身の画風を深めました。海洋画の評価が高まるにつれて、ロシア海軍からの依頼も増え、多くの作品を制作しました。1845年には、オスマン帝国のスルタンであるアブデュルメジト1世に招かれてイスタンブールを訪れ、その後1890年までに計8回も同市を訪問しています。イスタンブール滞在中は、オスマン帝国の宮廷画家にも任命され、歴代皇帝（アブデュルメジト1世、アブデュルアズィズ、アブデュルハミト2世）から多くの作品を委嘱されました。そのうち30点は現在でもドルマバフチェ宮殿に飾られており、その他の作品もトルコ各地の美術館に収蔵されています。

長寿を全うしたアイヴァゾフスキーは、当時としてはロシアで最も多作な画家の一人であり、没するまでに6000点を超える作品を残しました。芸術家としての成功によって得た資金で、故郷のフェオドシヤに美術学校や美術館を設立し、後進の育成にも力を注ぎました。アイヴァゾフスキーの作品は、競売市場でも高い評価を受けており、その総売上は320万ドルを超えています。しかし、その人気故に贋作も多く、ロシアの画家の中では最も贋作が多い画家の一人とも言われています。

彼の作品は、波の描写や、光の表現が非常に繊細で、その技術は多くの人々を魅了し続けています。また、彼が描いた海は、単なる風景画ではなく、人間の感情やドラマが込められていると評されています。アイヴァゾフスキーの作品は、現在も世界中の美術館で展示されており、多くの人々に愛されています。

主な作品

『ナヴァリノの海戦』
『黒海』
『第九の波』
『嵐の海』
『月光の夜』
『虹』

参考文献

ポルドミンスキイ 著、尾家順子 訳『ロシア絵画の旅 はじまりはトレチャコフ美術館』群像社、2012年10月。ISBN 978-4-903619-37-8。

外部リンク

アイワゾフスキー
イワン・アイヴァゾフスキー「月夜」
Ivan Aivazovsky at Olga's Gallery

もう一度検索