イヴァン・カルデロン

プエルトリコが生んだ元プロボクサー、イヴァン・カルデロン（Ivan Calderón Marrero）は、1975年 1月7日にその生を受けました。華奢な体格ながら、その卓越したスピードと防御技術から「Iron Boy（アイアン・ボーイ）」の愛称で親しまれ、軽量級で輝かしいキャリアを築き上げました。彼はWBO世界ミニマム級およびライトフライ級の二つの階級で世界王座に就き、特にミニマム級での長期政権は特筆に値します。

アマチュア時代

プロ転向前、カルデロンはアマチュアボクシングの世界で経験を積みました。1999年8月、カナダで開催されたパンアメリカン競技大会のライトフライ級（48kg）に出場し、準決勝で敗れたものの銅メダルを獲得しています。同年同月には、アメリカのヒューストンで開催された世界ボクシング選手権大会にも同階級で出場しましたが、こちらは1回戦で敗退となりました。また、2000年9月にはシドニーオリンピックにプエルトリコ代表としてライトフライ級で出場しましたが、無念にも1回戦敗退に終わっています。アマチュアキャリアにおいて、後にプロで活躍するブライアン・ビロリアとは4度対戦し、3勝1敗と勝ち越しています。

プロキャリアの始まり

2001年2月17日、カルデロンはアメリカ合衆国のラスベガスにあるMGMグランド・ガーデン・アリーナでプロデビューを果たしました。デビュー戦で初回に2度のダウンを奪い、初回2分43秒でのTKO勝利という鮮烈な白星スタートを切りました。プロ入り後順調にキャリアを積み重ね、2002年11月22日にはリー・サンドバルとのNABO北米ミニマム級王座決定戦を制し、キャリア初のタイトルを獲得しました。

世界王座奪取とミニマム級長期政権

カルデロンは2003年5月3日、ラスベガスにてWBO世界ミニマム級王者エドゥアルド・レイ・マルケスに挑戦。試合は9回にマルケスが負傷したため判定となり、カルデロンが3-0の負傷判定で勝利し、自身初の世界タイトルであるWBO世界ミニマム級王座を獲得しました。この王座を彼は長期にわたって保持することとなります。

初防衛戦は同年9月5日、プエルトリコで行われたロレンソ・トレホ戦で、判定で勝利を収めました。同年12月6日には、かつて同王座を保持していたアレックス・サンチェスとの注目の一戦に臨み、巧みな試合運びでサンチェスをコントロールし判定勝ち。2度目の防衛に成功しました。以後も順調に防衛を重ね、元IBF王者のエドガル・カルデナスとのノンタイトル戦（体重超過のため）ではKO勝ち、ロベルト・カルロス・レイバとの苦戦を乗り越えての防衛、そしてノエル・ツニャカオにはTKO勝利を収めるなど、様々なタイプの挑戦者を退けました。2005年12月10日には元IBF王者ダニエル・レイジェスを、2006年2月18日には元WBC王者イサック・ブストスを判定で破り、権威ある元世界王者たちをも退ける実力を見せつけました。2006年10月21日にはホセ・ルイス・バレラを相手に10度目の防衛に成功し、WBOからスーパー王座に認定されました。11度目の防衛戦となった2007年4月28日のロナルド・バレラ戦では、キャリア最大の苦戦を強いられながらも薄氷の判定勝利を収め、ミニマム級王座を計11度防衛した後に王座を返上しました。

2階級制覇とライトフライ級防衛

ミニマム級での輝かしい実績を引っ提げ、カルデロンは階級を上げました。2007年8月25日、ウーゴ・カサレスが持つWBO世界ライトフライ級王座に挑戦。試合中にダウンを奪われる厳しい展開となったものの、粘り強く巻き返して2-1の判定勝利を収め、見事に2階級制覇を達成しました。この勝利と同時に、権威あるリングマガジン誌のライトフライ級王座も獲得しています。

ライトフライ級王座の防衛ロードでも、カルデロンは持ち前の技巧を発揮しました。ファン・エスクゥイアや元王者のネルソン・ディーバらを相手に判定勝利を収め、順調に防衛を重ねました。ウーゴ・カサレスとの再戦では、偶然のバッティングによる負傷で早期に試合が終了し、判定で勝利を収めています。ロデル・マヨールとの対戦では、2度とも偶然のバッティングによって試合が中断・終了となり、一度目は負傷引分、二度目は負傷判定勝利という、珍しい形で王座を防衛しました。ヘスス・イリベとの試合では序盤にダウンを喫しながらも、立て直して判定勝利を収め、ライトフライ級王座を計6度防衛しました。

キャリアの転換点と引退

2010年8月28日、カルデロンはWBA世界ライトフライ級王者ジョバンニ・セグラとの王座統一戦に臨みました。しかし、この試合で8回にKO負けを喫し、プロキャリアで初めての敗戦となりました。これにより、3年間保持してきたWBO王座を失い、王座統一も果たせませんでした。翌2011年4月2日にはセグラとのダイレクトリマッチを行いましたが、再びKO負けを喫し、王座返り咲きはなりませんでした。

その後、2011年10月29日にはWBOラテンアメリカミニマム級王座を獲得しましたが、晩年のキャリアは厳しいものとなりました。2012年10月6日、カルデロンはWBO世界ミニマム級王者モイセス・フェンテスに挑戦し、5年ぶりの世界王座返り咲きを目指しました。試合序盤は持ち前のスピードで優位に立ちましたが、フェンテスの執拗なボディ攻撃に体力を削られました。そして5回、ボディへの攻撃によってダウンを奪われ、最後は強烈なボディブローを受けてKO負けを喫しました。この試合を最後に、イヴァン・カルデロンは現役を引退しました。

「Iron Boy」イヴァン・カルデロンは、その防御技術とスピードを武器に、軽量級で二階級を制覇し、特にミニマム級ではWBO史上屈指の長期政権を築いた技巧派ボクサーとして、プエルトリコのボクシング史にその名を刻んでいます。

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