イヴァン1世

イヴァン1世ダニーロヴィチ：モスクワ大公の業績

イヴァン1世ダニーロヴィチ（Иван I Данилович）は、1340年3月31日に亡くなるまで、モスクワ大公とウラジーミル大公として在位しました。彼はモスクワ公ダニール・アレクサンドロヴィチの子供であり、特に「イヴァン・カリター」として知られています。この名前は彼が大規模な徴税権を持ち、その富を築いたことに由来しています。彼の治世は、金銭的な力や外交的な駆け引きによって支えられ、モスクワを強固にするための重要な時期とされています。

政治的背景とライバル関係

イヴァン1世が公位に就いた14世紀初頭、モスクワ公国はトヴェリ公国とウラジーミル大公位を巡って熾烈な競争を繰り広げていました。この時期、イヴァンの兄ユーリーがモスクワ公でしたが、1324年にウズベク・ハンのもとでトヴェリ公ドミトリー・ミハイロヴィチに殺されるという悲劇が発生します。この混乱の中、次の年にはドミトリーも殺され、ウズベク・ハンは新たにアレクサンドル・ミハイロヴィチにウラジーミル大公位を与えました。

イヴァン1世は、1327年に起こったトヴェリでの民衆反乱の際、ウズベクからの許可を得て5万人のタタール軍を率いてトヴェリに進撃し、最終的にはトヴェリを破壊しました。この功績により、1328年にはウズベク・ハンから大公位を正式に授与されることとなります。

内政と外交の駆け引き

1337年、亡命中のトヴェリ大公アレクサンドルは、リトアニア大公国の援助を得てイヴァンに対抗しましたが、彼はウズベク・ハンのもとに出頭せざるを得なくなります。アレクサンドルは再びハン国に召喚され、1338年には息子フョードルとともに処刑されました。この出来事は、イヴァン1世の勢力をさらに強める要因となります。

彼はジョチ・ウルスに忠誠を誓い、徴税人としての役割を果たすことで、モスクワに豊かさをもたらしました。その結果、周辺の公国（ベロオーゼロ公国、ガーリチ公国、ウグリチ公国、コストロマー公国）もまた彼の影響下に入り、モスクワは北東ルーシ地方での主導的な地位を確立していきました。特に、彼の息子セミョーンへの大公位の相続は、彼の権力をさらに盤石なものにしました。

正教会との関係の強化

イヴァン1世の治世において、正教会との関係もまた重要な役割を果たしました。キエフおよび全ルーシの府主教ピョートルは、トヴェリとの争いでモスクワを支持し、ウラジーミルに府主教座が存在しながらも、モスクワに滞在し続けました。その後、1328年には次の府主教フェオグノストによって府主教座が正式にウラジーミルからモスクワへ移され、モスクワの宗教的地位が高まりました。これにより、モスクワは宗教的な側面からも周辺に対する優位性を持つことになりました。

結論

イヴァン1世ダニーロヴィチの治世は、モスクワの経済的・政治的基盤を強化し、周辺公国への影響力を高める重要な時期でありました。富を築き、同時に教会との関係を深めた彼の足跡は、後のロシアの歴史に大きな影響を与えることになります。

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