イヴァン6世 (ロシア皇帝)

イヴァン6世の生涯と歴史の影

イヴァン6世（Иоанн VI Антонович）は1740年8月23日に誕生し、ロマノフ朝の第5代皇帝として短い在位を果たしました。わずか生後2か月で皇帝に即位し、出生と同時に運命が決定づけられた彼の人生は、一も二もなく波乱に満ちていました。彼は女帝アンナの姉、エカチェリーナの孫として生まれ、ブルクハルト・クリストフ・フォン・ミュンニヒ元帥やアンドレイ・オステルマン伯爵によって取り仕切られる幼少期を送りました。

1741年11月、ピョートル1世の娘エリザヴェータが軍を用いて宮廷でのクーデターを実行し、イヴァン6世は不運にも廃位されました。この事態は、アンナが意図したイヴァン5世の系統による継承計画を頓挫させるものでした。エリザヴェータの圧倒的な権力の下、イヴァンの名前さえ口に出すことを禁じられ、彼を示すすべての記録は破壊され、存在を消し去る徹底した抑圧が実行されました。

イヴァン6世の歴史からの消失を図るエリザヴェータの措置は、それに留まらず、イヴァンの肖像が描かれた貨幣も回収され、知らずに使用した者は投獄されました。その後、彼は家族と引き離され、アルハンゲリスク州の寒村で幽閉されました。約15年間その地で過ごした後、1756年に彼はシュリッセリブルク城塞内の監獄に送られました。この城塞は戦略的に重要な場所にあり、脱出や外部との接触を完全に遮断するために設計されていました。

イヴァンは、身分を隠されたまま独房に投獄され、脱出計画が立てられることがあれば即座に殺されるという厳命が下されました。彼の人生は、まさに運命によって閉ざされたと言えます。1764年、廃位から23年後、ウクライナ人の士官ヴァシーリー・ミローヴィチが彼の救出を試みるも、計画は失敗し、イヴァン6世はその場で看守に刺殺されました。

このように、イヴァン6世はロシア史の陰に隠れた悲劇の象徴ともいえる存在でした。2008年には、ホルモゴルイの聖堂近くで行われた発掘調査の際に特別に埋葬された若者の遺骨が見つかりました。この遺骨がイヴァン6世のものである可能性が高いとの法医学的な証拠も挙げられましたが、ロシア科学アカデミーはこの結果を否定しました。実際には、彼はシュリッセリブルクで亡くなり、他の受刑者たちと共にその地に埋葬されたと考えられています。

イヴァン6世の人生は、皇帝としての地位を持ちながらも、抑圧に抗えず、歴史の闇に葬られてしまった一人の若者の物語です。彼が生きた時代とその悲劇的な運命は、今日でも多くの歴史家や研究者によって語り継がれています。彼の事績を掘り起こす試みは続いており、イヴァン6世の存在が代々のロシア帝国の一部であったことを証明し続けています。

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